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カテゴリ「ひとくち書評」

2010年03月01日

ひとくち書評25

『ママがこわれた』(後藤みわこ/岩崎書店)

「福島正実記念SF童話賞」の大賞を受賞した作品で、著者のデビュー作。

4年生の陸(りく)が帰宅すると、
るすばんロボットのルイが「ママはこわれました」と言う。
あわててさがしに出かけると、病院にかけこんでいくパパの姿が...。

ユーモラスなエピソードの中に
「親子の絆」というシリアスなテーマが織りこまれた物語。
謎解きもたのしめる。

キーワードは「くそったれ」。

   「 ~ おやじなんか、なんにもわかってない」

「~」のところの息子のセリフが身につまされる。

Tips...ルイが空中に浮く「反重力発生そうち」は、
のちに書かれる「飛び箱」の「反重力エンジン」につながっていて興味深い。


『いのちがぱちん』(後藤みわこ/学研)

『ママがこわれた』でデビューした著者の第2作。

曲がったことが大きらいな4年生「正義のミカコ」が、
傍若無人な弟や転校生の智、交通事故で体が不自由になった
ヒロさんとのかかわりを通して「いのち」を見つめていく物語。

   ぱちん。
   あれは、いのちの音。
   ここにいのちがあったんだよって、教えてくれる音。

身近なできごとをきっかけに、
中学年くらいの子でも無理なく生と死について考えることができる。

「ぱちん」という音が効いている。
何の音なのかは、本書にて。


『ステラの秘密の宝箱』
『ジャックの豆の木』
『アリスの不思議な青い砂』(後藤みわこ/青い鳥文庫fシリーズ)

「銀河へ飛びだせBOX!」の既刊3冊、まとめて読了。

時は23世紀初頭、
月の裏側にある「ファーサイド学園」に在学する
ジャック、クラウド、キイのイケメン(死語か)中3トリオが、
それぞれの“さがしもの”を追って宇宙をかけめぐるスペースオペラ。

独立したストーリーなので、3冊のどれから読んでも入っていける。

みなしごで宇宙船技師の養子となり学園長も務めるジャック、
失踪したワープ実験船パイロットの孫にあたるクラウド、
祖父によりスパイとして学園に送り込まれたが2人の味方となったキイ、
それぞれが女の子大好きだったり女性アレルギーだったり
メカオタクだったりと、キャラクターの魅力いっぱい。

悪漢ヒヒとジャックの対決、ひるんだヒヒが声をあげる場面で...

   「ヒ、ヒー!」
    ナイフごと飛び下がるヒヒに、ジャックがいった。
   「自己紹介?」(『ステラの~』)

このゆるい空気感がたまらない。

それにしても、なぜ「fシリーズ」なのだろう。


『あした地球がおわる』(後藤みわこ/汐文社)

読み進むほどにぞくぞくしてくる近未来を舞台にした異色作。

生物が死に絶えた地球。
残された6年生のコウと貴也、幼いルミ、中学生の夏姫が
自力で生き抜いていこうとする物語。

4人だけがなぜ生き残ったか、コウと貴也の関係は、
ほかに生きている人間はいないのかなどが、
人類を滅亡させた「カケラ」「あれ」の正体とともに徐々に明かされていく。

   「おれたちは人間なんだからさ、歌だって、本だって、
   なくしちゃいけないんだと思う。
   もう、なくしすぎたんだから、一冊くらい持っていこうぜ」

対象はずばり、6年男子。ピンポイントで読ませたい。


『黒まるパンはだれのもの?』(後藤みわこ/あかね書房)

手づくりパンと携帯電話を小道具に、
「おれのお母ちゃん」というテーマがぐいぐいまっすぐ迫ってくる物語。

4年生の雄介は、これまで自分だけのものだったはずの
母ちゃん手づくりの黒まるパンがそうではなくなりはじめたことに気づき、
けれどなかなかその事実を受け入れることができず、悶々と悩み、
ついに...。

   「 ~ おれのパンやったのに。
   おれのお母ちゃんのパンやのに、おれのお母ちゃんやのに!」

中学年のうちに母親からの自立の芽が出てくると、
じょうずに成長していくだろうなぁ、
だけど現実の男の子はいつまでたってもなぁ、
だからこういう本を読んで疑似体験してもらわないとなぁ...
などと思いながら読んだ本。

みわこさん、ありがとう。


      ◇     ◇     ◇


『越境する児童文学』(野上暁/長崎出版)

『飛ぶ教室』の連載をまとめたもの。
児童文学とYA、一般書の境目を知りたくて目を通す。

   「児童文学と思春期文学[≒YA]の基本的なちがいは、
   主人公の成長のしかたにあるのではない ~ YA小説は、
   児童文学のように <自己> と自己発見に焦点をあてるよりも、
   社会と個人の関係を前面に押しだして、
   社会構造を断固として問いただす ~」

引用されているトライツのこの言明、いまいちよくわからない。
児童文学だって「社会と個人の関係」が描かれているし、
YAだって「 <自己> と自己発見」に焦点があたっているもの。

笹生陽子『ぼくは悪党になりたい』が一般書、
『バラ色の怪物』『サンネンイチゴ』が児童書として流通する違いについて、
著者は、

   「一般書の編集部から依頼されたか、
   児童書の編集者によって作られたかの違いだけであって、
   それは作品のジャンル分けとは関係ない」

と書く。

それを言っちゃあおしまいよ...とつぶやきたくなる。

いずれにせよ、本書に取り上げられている児童文学、思春期文学の
半分も読んでいないことにあらためて気づかされる。
読書量の圧倒的な不足を痛感。

とくに80年代後半から90年代にかけて、
YAというジャンルが固まりつつある時期の作品に弱い。

新卒から数年間、ぼくがいちばん子どもの本から離れていたころだ。

誤植Tips
 児童文学いう p.4
 始めての旅 p.93
 福音館書房 p.108
 片川優子 p.191


『ことばの贈りもの』(松岡享子/東京子ども図書館)

「レクチャーブックス・松岡享子の本2」という副題で
3本の講演録が収められている。

家庭文庫や図書館活動に長くかかわっている著者が、
この講演では読書や読み聞かせ以前の、
子どもがことばを獲得していく時期について語っている。

   もう何年も前から、私の関心は、読書より前のこと、
   子どもが本に出会う以前のことに、より強く
   引きつけられるようになっていました。
   ~ 子どもが本に触れ、読書をたのしむようになるためには、
   この時期に、ことばの土台をしっかりつくっておくことが
   大切だと思うようになったからです。

平明な語りかけるような文章の中にだいじなことがたくさんつまっている。
いくつも折り返した“ドッグイヤー”から一つ選ぶとすると、これ。

   お話を聞くとき、本を読むとき、
   まずそこで語られることばに耳を傾ける、
   そこに書かれていることばに興味をもつ、という基本姿勢は、
   このごく幼い日の親子の通じ合いの体験から生まれてくるのです。
   そのためにこそ、まずおとなが子どものいうことを
   よく聞くことが肝要だと ~

幼稚園の講演に招かれると幼児期の読み聞かせと親子関係、
小学校とのつながりについて話すが、それより前の
乳児期から「ことばの力」を育てていくことがだいじだという。

となると、それらのことはどんな場で誰に話せば伝わるのか、
という難問に突き当たる。


2010年02月08日

ひとくち書評24

『水底に沈む涙』(池田美代子/青い鳥文庫)

   ここでは、わたしひとりでどうにかしなければならないってことなの?

青い鳥文庫に移籍したルナが
「新妖界ナビ・ルナ」となってからの2作目。

大人の事情は詳らかになってはいないが、
書き続けていかれるようでまずはひと安心。
借り手の多い人気シリーズなので。

はさみこんであるリーフに青い鳥文庫30周年と
岩波少年文庫60周年のコラボキャンペーンのお知らせがある。
コンテンツの相互乗り入れなどしたらおもしろそう。

肝心のストーリー。
青龍をさがし水害にあった村にやってきたルナたち、
過酷なレースに巻きこまれた末に残ったものは...。

課題をクリアしてアイテムを手に入れ、つぎのステージへ進んでいく。
ゲームの攻略と同じしくみで、初歩の読み手にはとっつきやすい。


『春風のネックレス』『木もれ日の髪かざり』『渚のイヤリング』
『月明かりのストラップ』(後藤みわこ/岩崎書店フォア文庫)

「カプリの恋占い」と題されたシリーズの既刊本をまとめて読んだ。
一読した印象...中学年の女の子にぴったり。

てのひらサイズの少女、ビーズアクセサリ、
恋占いにクスリの駄じゃれ、
それに少女マンガふうのイラストが満載...
これだけそろえば食いついてくること間違いなし。
あとはどうやって露出し手渡すか、文庫主宰の腕の見せどころ。

応援したくなる個人的な理由が5つばかり。
著者がぼくと同じツイッタラーであること、
著者がぼくと同い年であること、
レギュラー登場人物の姓がぼくと同じであること、
学年1クラスという設定がぼくの学校と同じであること、
もうひとつは...ないしょ。

予定されている5巻で完結の予定とのこと。
「まだつぎは出ないの~?」という声がすぐに聞こえてきそう。


『スコアブック 3』(伊集院静/講談社)

最強のチームをつくろうと奮闘する野球好きな4年生“ミサキ”の物語。
3巻目に入り、ようやくメンバーが9人そろうところまで話が進んできた。

1から(0から?)メンバーをあつめてまわること、
スカウトしたメンバーがひとくせもふたくせもあること、
強力なライバルが立ちはだかること、
謎のおとながとりまいていることなど、
アパッチ野球軍やドカベン以来の定番野球もの。

ストーリーそのものに大きな破綻はなく楽しめるが、ただ、
チームのGMが4年生の女の子という設定に無理を感じてしまう。

   「喜びは分かち合うものなの」
   「うん、目に見えるものだけを追いかけてると
    答えが見つからなくなるって」

ここまで悟った4年生、いるかなぁ。

   「そう、海。湘南の海。ずっと私たちを見守ってくれていた、
    あの海。やさしくて大きな湘南の海……。
    “湘南オーシャンズ”」

湘南のご当地本でもある。

明らかな誤りが2か所。校正が甘い。


『シロクまつりへようこそ!』(後藤みわこ/学習研究社)

身の回りにおきる事件を3年生の男の子リキが推理力を発揮して解決する。
でも、リキは気が弱く名探偵の自覚もなし。はにかみながら、
「ぼく、探偵じゃありません...」
というシリーズの3冊目。

4話収録されているうち第2話「リキにアタック!」がとくにお気に入り。

   「あの……応募してくれて、ありがとう。」
   ミミのふくらんだほっぺたが、きゅうっとしぼみました。

小学校のころに読みたかった胸キュン(死語か)なおはなし。

タイトルに注意。
本文を半分読みすすむまで「シロクマまつり」だと思い込んでいた。


『1ねん1くみ1ばんサイコー!』(後藤竜二/ポプラ社)

昨年9月に出版された本、ようやく入手。

1984年にスタートしたくろさわくんシリーズ、
25年かけてたどりついた25冊目は、どうやら最終巻らしい。

ページを開いたとたん、

  「くろさわくんが、てんこうしました。」

というしらかわ先生の衝撃的なことばがとびこんでくる。

北海道へ行ってしまったくろさわくんに手紙を書くことになり、
クラスメイトの思いが綴られていく。
その手紙を読んだくろさわくんからの返事。

   1ねん1くみは サイコーでした!
   1ねん1くみで、おれ うまれかわりました。
   みんなのこと、ぜったい わすれません!

けれど、親友のしんくんだけは思いがあふれ、
どうしても手紙を書くことができない。

  「ゆっくりで いいからね。」

というしらかわ先生に励まされ書き出すその物語は...。

最終ページを読み、そうきたか、やられた!


2010年01月21日

ひとくち書評23

『甘党仙人』(濱野京子/理論社)

   いったとたんに、陸はしまったと思った。
   でも、口にしてしまった言葉を取り消すことはできない。

バスケットボールが得意な4年生の陸、友だちの翔の家に
中国からやってきたおじいちゃんが気になってしかたがない。

テレパシーが使えたり、瞬間移動ができたり...
あのおじいちゃん、もしかすると仙人かもしれない。
それも甘いものが大好きな。

YA分野でヒットをとばしている濱野京子の新作は
中学年むけの友情と淡い初恋の物語、
甘党の仙人というスパイスがピリッと効いている。

バレンタインにロイズのチョコレートを選ぶあたり、好きだなぁ。


『白いプリンスとタイガー』(宗田理/角川つばさ文庫)

   『もうやるしかない。たとえ失敗しても、
    燃え尽きる前に祥子の魂は絶対に助ける』
   隼人は初めて祥子の名前を呼ぶと、サーベルタイガーを
   牙で押さえこんでいる冷凍マンモスに向かって走り出した。

「東京キャッツタウン」シリーズの2冊目。
たくさんの登場人物がめまぐるしく動き、
ストーリーが展開していくスラップスティックファンタジー。

ついていくのがやっとだが、人気は出そう。
1冊目を読んでおくと理解が早い。


   読書は自転車と同じように、最初は少しの訓練が必要です。
   しかし、読んでいく楽しさを知れば、どんな遠くの世界にも
   自分の速度で出かけることができます。それは、
   想像力という「つばさ」を手に入れたことにほかなりません。

創刊してまもなく1周年を迎える角川つばさ文庫、
「発刊のことば」をあらためて読み直す。その意気や善し。

2010年は「国民読書年」とされている。

事業仕分けでかんたんに削られてしまうような
底の浅いイベント的施策でなく、地道な、
けれど実効ある取り組みをうちの学校でも考えたい。


『バカ田トリオのゆううつ』(深沢美潮/ポプラカラフル文庫)

   「おまわりさん、捕まえてください。
    その人、振り込め詐欺の犯人です!」

IQ探偵ムーの最新作は「朝小」連載の文庫化。

身近なできごとがからみあい、
事件が見えてきたところで夢羽の推理がビシッと決まる。

読み出したら止まらない
「ジェットコースターノベル」という惹句に偽りなし。

“ひげうさぎ文庫”でも大人気のシリーズ、
寒い季節が背景のストーリーはまさにいまが旬。

   白いダウンジャケットを着て、足長に見えるジーンズに
   白いセーターの彼女。やっぱり白い毛糸帽子をかぶっているのが、
   まるで風邪薬のCMに出てくる美少女そっくりだ。
   いや、違う。夢羽のほうが百倍かわいい。

男の子の心をくすぐるキャラクター、
いちど手にしたら一気読みまちがいなし。


『季節はずれの幽霊騒動』(深沢美潮/ポプラカラフル文庫)

   「そやなくて。ほんまは……うち、うれしかってん!」
                第一話「季節はずれの幽霊騒動」より

   「たぶん、彼女が犯人だ。早く追いかけよう!」
                   第二話「オリオンの約束」より

人気シリーズ「IQ探偵タクト」の4冊目はポプラカラフル文庫として。

ムーが公立小学校の5年生であるのに対して、
タクトは制服がおしゃれな私立小学校に通う6年生。
なんとなく親近感を覚える。

一話目は幽霊さわぎに友情がからんだ謎を解き、
二話目はロックのライブ会場で起きる盗難事件をロマンチックに解決する。

先ごろ出版されたムーの新刊とあわせ、文庫にならべる予定。


『奇巌城』(ルブラン/ポプラ文庫)

   「わがはいは、この秘宝には、ぜったい手をつけんのだ。
    これはむかしからのフランス国民のものなのだ。
    [中略]
    国民のものに手をだしはしない。
    どうか、このことを全世界に知らせてくれたまえ」

やはり買ってしまった、ルパンの復刊シリーズ。

サイトでカバーの絵を見た瞬間に、小学校の図書室の佇まいから、
司書の先生の声、果ては本のにおいまで、
懐かしい思い出がまとめてうかんできた。

で、そのまま「買い物カゴ」へ。

「少年探偵団」シリーズ26巻が終わったと思ったら、
こんどは「怪盗ルパン」シリーズの復刻とは。やるな、ポプラ社。

たしかあのときは全15巻だったはず。ぜんぶ読み直すとするか。

それにしても、子ども時代の刷り込みはこわい。


『天才女医、アンが行く』(福田隆浩/講談社)

   アン先生は、一番初めの子のときから、
   すでに彼の名前を呼んでいた。そして、その後も、
   検診を受ける子どもたち全員を、名前で呼び、声をかけていた。

シリーズ3作目、
アン先生のとぼけたキャラと高度な医療技術のギャップ、
ひねりのあるプロットとはっとさせられる謎解き、
そして視点人物の悩みと成長の物語、文句なしにおもしろい。

学校を描いた場面のディテールにリアリティがあり、感心させられる。

著者の本業は特別支援学校の先生とのこと。なるほどね。


      ◇     ◇     ◇


『ブンダバーのただいま~!』(くぼしまりお/ポプラ社)

   「ぼくはね、友だちが真剣に考えて決めたことは、
    それが、ぼくにとって、どんなにさみしいことでも、
    応援することにしてるんだ」

最新刊は盗まれたマーメイドちゃんを取り戻す完結編。
文と絵の絶妙なコラボが見どころ。


『月光電気館の幽霊』(斉藤洋/ポプラポケット文庫)

   「パパー!『明日に向かって撃て!』と『バジル大作戦』っていう
    映画のDVD、持ってるーっ?」

「霊界交渉人ショウタ」シリーズの2作目。
往年の名作映画ネタでおとなもたのしめる。


『猫耳探偵まどか』(松原秀行/講談社)

   「もういいわ、そんな戯れ言は。
    わたし、わかったの、この事件の真相が。」

“書き下ろし100冊”として刊行された
青い鳥文庫パスワードシリーズのスピンオフ作品。
表紙の絵、ピンク系の色、目をひく装丁にしあがっている。


『クローバー』(中西翠/講談社)

   大切なものを守ろうとしてもうまくいかないのはどうしてだろう。
   どうしてこんなに不器用なんだろう。

四つ葉のクローバーをモチーフにしたさわやかな初恋物語。
「恋の話が読みたい」という小学生にぴったり。


『僕とあいつのトライアル』(川上途行/ポプラ社)

   手に入れたいもの、失いたくないものもわかったのに。
   僕はどうすればいいのだろう。何を頑張ればいい?

売れないお笑い芸人と小学3年生が漫才コンビを組む...
窮屈な設定をさわやかな恋がカバーした佳品。


『マイナークラブハウスは混線状態』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)

   「……奥の方の自分と、よく相談するんだよ。」

ただのYAではないとは思っていたが、
シリーズ3冊でここまで化けるとは。
すべて文庫書き下ろしなのもありがたい。

ピュアフル文庫の発行元がジャイブからポプラ社にうつったらしい。


『妖怪アパートの幽雅な日常3』(香月日輪/講談社文庫)

あまり本を読まない中3のムスコが喜んで手にする文庫のひとつ。
心にひびくことばが散りばめられている。

   そう。「先輩」であり「先生」なんだよ、まさに。
   子どもにとっての大人の存在って、それなんじゃねぇ?

   なぜ「俺たち」だけが、変わってゆくのだろう。
   なぜ「俺たち」は、変わらずにはいられないのだろう。

   「結局は今も昔も、そういう問題の多くは
    『未知のもの』に対する怖れや偏見や差別から起こるんだよね」

などなど。


      ◇     ◇     ◇


以上、ツイッターにPostした「ひとくち書評」から、
子どもの本関係を抜き出し、ブログ用に体裁を整えて載せました。


2009年08月31日

ひとくち書評22

「読み聞かせ」をテーマに講演するときには、
読み聞かせの意義や願い、心構え、気をつけることなどを、
じっさいに絵本を手にとり実演しながらお話するようにしています。

講演をかさねるうちに話の骨格はだいたいきまってきていますが、
まったく同じ話をするのはつまらないので、
参加対象や与えられた時間によってとりあげる本を変えたり、
話の順序を入れ替えたりするようにしています。

また、新しい情報を仕入れて提供しようと、
あれこれの資料にできるだけあたるようにもしています。


今回は、そんななかで見つけたとっておきの本をご紹介しましょう。

講演のネタ元、大公開!


『絵本を読んであげましょう』(森ゆり子/「絵本で子育て」センター)

NPO法人「絵本で子育て」センター理事長である著者が、
各地でおこなった講演・講座の草稿をもとに
絵本と読み聞かせについてまとめた本。

「講演録」とあるが一本のライブをそのまま記録したものとは異なり、
一冊の本として、また一編の絵本論、読み聞かせ論として再構成され、
要点がコンパクトにまとまっている。


   ですから絵本は自分で読むものではないのです。
   読んであげるもの、読んでもらうものだと思ってください。

   絵本を読んでいる時間は絵本を仲立ちにして、子どもの心と、
   そしてお母さん(読み手)の心がぴったりふれ合っている、
   結び合っているという、とてもゆたかな時間なのです。

   そして絵本を一緒に読んで楽しいねとか面白いね、
   おいしそうだね、かわいそうだったね、という
   そういう感情の体験をたくさん積み重ねることで
   親子の絆は強く太く育つはずだと思っています。

読み聞かせ論の骨格をなすこの筋立てに、
絵本の構成や読み方、メディアの問題を肉づけし、
具体的な本をとりあげて実演したり解説したりしている。


良質の講演を聴いて心がふわっとあたたかくなり、
今晩は子どもに本を読んであげようか、という気持ちにさせてくれる。


『読み聞かせは心の脳に届く』(泰羅雅登/くもん出版)

“読み聞かせの効果”を科学的に証明したいという脳科学者の
問題意識からはじまった共同研究により得られた新しい知見が
わかりやすく書かれた本。


   結論から述べると、世界で初めて確認できたのが
   「読み聞かせは“心の脳”に働きかける」
   ということです。


「心の脳」とは、
読み聞かせの効果をわかりやすく伝えるための著者の造語で、
感情や情動をつかさどる大脳辺縁系のこと。

読み聞かせをしてもらっているときの子どもの脳を調べると、
コミュニケーションや言語にかかわる前頭連合野ではなく、
「心の脳」=大脳辺縁系が活発に働いていることがわかったという。


大脳辺縁系は喜怒哀楽という心の動きに関する働きにくわえ、
生物として最も基本的な行動に結びつく重要な働き、
自身の生存確率を高めていくための働きをつかさどっている。

   乳幼児のときに心の脳が、
   おかあさんからよい働きかけを受ける。
   そうすることで、子どもたちの情動が豊かになり、
   心身ともに健全に育っていく。

けだし、読み聞かせの意義は「心の脳」を育てることにあり、ということ。


   だからといって、「読み聞かせをしなきゃ」と、
   義務のようにとらえる必要はありません。
   もちろん、「脳を育て、鍛えるために」などと
   意識する必要もありません。
   何より大切なのは、
   親子でいっしょに読み聞かせを楽しむことです。

脳科学の知見にとびついて「脳トレ」がはやるご時勢にあって、
著者のこの姿勢が悩み多き親に安心感をあたえてくれる。


『小学生のための読解力をつける魔法の本棚』(中島克治/小学館)

   読書をしている生徒はやはり読解力があるのです。
   さらに言えば、その力は国語の成績の範囲にとどまらないのです。

と述べる著者は有名私学の国語科の先生で、
読解力の育て方・伸ばし方と読解問題の解き方を
実例をあげて解説してくれる。


しかし、読解力は試験でいい点をとるのに必要なだけでなく、
「人が生きていくためになくてはならない力」だともいう。
そのあたりの立脚点が読書を通じた人間教育につながっている。


なお、巻末の「おすすめブックリスト」はかなりレベルが高い。

低・中学年向け75冊のなかには『野菊の墓』や『秘密の花園』が
はいっていて、高学年向け95冊には『人間の証明』や『壁』、
『ご冗談でしょう、ファインマンさん』まであげられている。

このくらい読めれば読解力もつくだろうし、
たしかに「魔法の本棚」というわけだ。


『「勉強しろ」と言わずに子供を勉強させる法』(小林公夫/PHP新書)

多くの受験生を指導し難関試験に合格させてきた実績と経験から、
「できる子・できない子」と親の関係を論じた本。

   「できる子」の親は、教えないで伸ばす傾向にあるのです。

   子供をダメにする親の典型は、ひと言でいうと、
   「子供の前にあるものを取り除く親、はしごをかける親」
   だといいます。

タイトルから想像されるお手軽なハウツー本ではなく、
骨太の芯のとおった軸のぶれない教育論となっている。


      ◇     ◇     ◇


『復活!! 虹北学園文芸部』(はやみねかおる/講談社)

“虹北学園”の“岩崎”とくれば、はやみねファンならピンとくる。
でもって“アイマイミー”ならぬ“マイン”とくれば、
これはもう手にとらずにはいられない。


岩崎三姉妹のいとこにあたる中学1年生の岩崎磨韻(マイン)が、
入学した虹北学園に文芸部を復活させようと奮闘する物語。

たのしみながら、ドキドキしながら読んでいくうちに、
小説の書き方や表現力を養うトレーニング法まで頭にはいってしまう。

舞台は中学校だが、
これから中学生になって夢を追う小学生にこそ読んでほしい本。

というわけで、総ルビといううれしい配慮もされている。


また、“おとな心”をくすぐる小ネタも満載で、

   戦隊もの
   テニスの王子様[←エースをねらえ! かも]
   コンダラ

などの定番ネタから

   亜愛一郎
   健康より原稿
   虹北商店街のお好み焼き屋

といったファンにだけ通じるコアなネタ、そして

   学級通信をなによりも優先する先生

という個人的なツボにはまってしまうフレーズまで、
ひっかかるたびに「あ、あれか」と連想がはたらき、
「やったな」とクスリ、笑みがこぼれてしまう。

本文のみならずイラストにも遊び心が仕込んであって、
巻末の1枚をひらけばそこにもクスリが二つ三つ。


良質のエンタテインメントを発信しつづける作家発、
「構想4年執筆2か月」(あとがき)、
この夏イチオシの熱血文芸部物語。


ところで、原稿の校正すべきところが光って見えるという人物が
登場するが、この本にはさみこまれたチラシが光って見えた。

  「熱血文学部物語」

あきらかな誤植。
このチラシ、『踊る夜行怪人』のようにレアものになるかしら。


      ◇     ◇     ◇


では、そのほか夏休みに読んだ本のタイトルを。

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2009年08月05日

ひとくち書評21

小中学生の夏休みを舞台にしたファンタジー、ミステリを何冊か
ご紹介しましょう。


『恐竜がくれた夏休み』(はやみねかおる/講談社)

6年生の美亜、ヒデヨシ、ヒメ、仁は、恐竜ロロを
6500万年前にかえすため満月の夜にひらかれる
お神輿大会に参加しようとするが...。

15年のときをかけて完成した「夏休み三部作」の完結編は、
恐竜と子どもたちのひと夏の物語。


この夏、はやみね作品が続々と刊行予定。おみのがしなく!

    ≫≫≫ 「はやみねな日々」


『カッパのかーやん』(溝江玲子/新日本出版社)

工事現場の幽霊さがしで祐太とケンが出あったのはカッパのかーやん。
開発で住むところがなく、動けなくなったかーやんを田舎の川に連れて
行こうと、涼香をあわせた4年生3人組がある作戦を思いつく。


『カッパのかーやんとひみつの川』(溝江玲子/新日本出版社)

1年前に助けたカッパのかーやんから祐太のもとに結婚式の招待状が届く。
涼香、ケンといっしょに天の川村を再訪した5年生3人組は、
カルト集団のかかわるおかしな事件にまきこまれてしまう。


ほのかな恋もあじわえるひと夏の冒険物語。
ストーリーをおうなら3年生くらいから、開発と環境破壊、
カルト集団といった現代社会のテーマにも迫るには高学年におすすめ。


あるMLを通して著者の溝江玲子さんと知りあうことができ、
サイン本を頂戴しました(正確には拙著とのブツブツ交換)。

出版されて13年、ロングセラーをつづける『かーやん』の
増刷を記念して、特製ミニうちわのプレゼントがあるそうです。


    ≫≫≫ 「童話&絵本」


『パスワード悪の華』(松原秀行/青い鳥文庫)

マコトとみずきは廃工場で不良グループにからまれ、
飛鳥とダイが出場した着ぐるみコンテストには白煙がまいあがる...
探偵団には夏休みも事件がやってくる。

一見、なんのかかわりもないエピソードがからみあい、
もつれた糸がほぐれるように謎が解けていく。
あいまにはさまるクイズ、パズルも脳トレにぴったり。


『IQ探偵ムー 春の暗号』(深沢美潮/カラフル文庫)

元の祖父がのこした書きつけの謎をあざやかに解きあかす「春の暗号」、
川で見つけたメッセージボトルを流した人をさぐるうちに意外な人物に
たどりつく「春のメッセージ」、の2編を収録。

今回も美少女探偵 茜崎夢羽 の人をしあわせにする推理がさえる。
大がかりなしかけなしにたのしめる、脱力系こどもミステリ。
楓陽館の天才少年探偵拓斗と未来が脇役で登場するおたのしみもあり。

春の設定だが、夏休みにも。


      ◇     ◇     ◇


では、例によって最近読んだ本のタイトルだけ。

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