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カテゴリ「ひとくち書評」

2010年08月21日

ひとくち書評33

『「激安」のからくり』(金子哲雄/中公新書ラクレ)

激安商品の“安さの理由”を追究し、消費者の賢いつきあい方を提案する。

  「安い」はなぜ成立しているのかを、考えてみてほしいのです。
  なにか理由があるはずです。
  どうしてこれほど安くできるのだろうか、
  と疑問に思うことがスタートです。
  「安さ」の謎解きをしているうちに、
  現代社会のさまざまな問題が見えてきます。

で、見えてきた問題にたいする対抗策、
たとえば激安商品にこんな注意書きをつけたらどうか。

  「この商品を買いすぎると、
   あなたの国で失業を招くおそれがあります」

ハンバーガーやスーツ、パソコンが激安で作れる理由を解説した
第1章だけでも読む価値あり。


『「実は、人前が苦手」な大人のための話し方』(後藤武士/幻冬舎文庫)

ベストセラー「読むだけですっきりわかる」シリーズの著者に
よる話し方の指南書、文庫書き下ろしで。

  生まれつき、話し上手な人、下手な人がいます。
  しかし、いくら「話し下手」であっても、
  ちょっとしたコツをツカムだけで、
  そこそこうまく話せるようになります。
  [中略]
  誰でも、その日から、簡単に、すぐに、使える
  具体的な手法をたくさん紹介させていただいてます。

本書の要旨を「はじめに」から抜き書きするとこうなろうか。

「ちょいナツ」「足の裏から膝まで」「自己紹介のアイロニー」
「だから型となんで型」「シュコンのリズムとグッチュのリズム」など、
印象に残るキーワードで話し方の具体的な手法、
“正真正銘の私の秘策”が公開されている。

たとえば、「ご出身はどちらですか」「自慢じゃありませんが」は
NGフレーズ。ではどのように言えばよいか...は本書にて。

  私は今でもどんな場合においても、
  人前で話す三日くらい前からシミュレーションを繰り返しています。

百戦錬磨のカリスマ講師にしてこのような努力を怠らないとすれば、
いわんや凡夫においてをや。


『編集者の仕事』(柴田光滋/新潮新書)

新潮社のベテラン編集者による「本」の本、
副題に「本の魂は細部に宿る」とある。

  ──いったい原稿はどんな具合にして本という形に仕立てられるのか。
  単行本、それも文字を主体にした単行本を中心にして、
  長く勤めた新潮社での体験を通し、編集者の仕事の
  あれこれについてお話ししていきたいと思っています。

  本はモノである──。

巷間話題の電子書籍もなんのその、このひとことに撃たれてしまった。

そうなんだよなぁ、紙質、サイズ、書体、色、手触り、重さ、におい、
スピン、ジャケット...すべてをひっくるめて「本」なんだよなぁ。

その「本」を創り出すプロセスを、編集者の仕事という窓からのぞいて
書き記した本。「『本』好き」にはたまらない情報がつまっている。

たとえば、四六版という呼称の由来、
新潮新書が1行39字になった理由、
本文に写真を組み込む場合の基本的な位置、
活字サイズの「ポイント」をミリに換算すると、などなど、
へぇボタンがいくつあっても足りやしない。

著者(テキスト)と編集者(本)との境界について、

  ここ[目次]は著者の頁ではなく、あくまで編集者の頁なのです。

  [奥付は]著者の頁ではなく、出版社の頁。

こう言い切るところにクリエイターとしての気概すら感じてしまう。

あらためて、とどめの一文。

  本とはモノなのです。


『子どもを英語嫌いにしない11の法則』(安河内哲也/学研新書)

偏差値大幅アップ、人気の英語講師による英語教育論を書き下ろしで。

  本書では、あらゆるご家庭で実践できる、子どもを英語嫌いにせず、
  英語を身に付けさせる方法をご紹介します。

大手予備校のテレビCMで、
「英語なんて言葉なんだ。こんなものやれば誰だってできるようになる!」
と熱く語っている先生の新著。

「二十歳で英検1級」を目標とし、それにむけたステップを解説する。
どれほどの英語至上論かと思って読んでみると...。

  幼児期から小学校にかけては、
  子どもとたくさん日本語でおしゃべりしてください。
  日本語の本をたくさん読み聞かせてください。

おや?

  母語となる日本語は知的能力の土台となります。
  思考力は母語によって形成されます。
  つまり、いろいろな教科の成績も日本語力=国語が基本になります。

  もちろん英語力の土台も日本語です。
  母語における読解力や語彙力や会話力などの言語能力を、
  第二言語がこえることは、よほどのことがない限りありえません。

おやおや?

この調子で読み進むと、小学校英語の位置づけ、
オールイングリッシュの授業の評価、
オーラルと文法のバランスについて、
考え方がかなり近いことがわかってくる。

  英語の授業をすべて英語で行うということに、
  私は疑問を感じています。[中略]
  すべての授業を英語だけにしてしまうと、
  大変に非効率的なやり方で英語を学ばせることになると思うのです。

  とにかく英語をたくさん聞けば自然と英語力が身に付くという
  「幻想」から、オールイングリッシュの授業がよいという発想に
  なるのかもしれませんが、
  ただ聞いているだけでは英語力はなかなか身に付きません。

オーラル重視、文法軽視のカリキュラムにも疑問を呈し、
四技能のバランスと文法学習についてこう述べる。

  本格的に英語学習が始まる中学生以降は、
  四技能をバランスよく学習させることに心を配りましょう。
  といっても別に難しいことではありません。
  英語を勉強する時に、
  「読む、書く、聞く、話す」のすべてをまとめてやればいいのです。

  私が声を大にして言いたいのは
  「第二外国語を学ぶなら、文法を学ぶことは不可欠だ」
  ということです。[中略]
  「読む、書く、聞く、話す」の四技能すべてにおいて、
  文法知識は不可欠です。

予備校=こてこての英語漬け、という思い込みは偏見だった。
こんな先生に英語を習えたら、「二十歳で英検1級」も夢じゃない。

具体的な練習法は本書にゆずることにして、
正道を行く英語教育論をどうぞ。


『命を救う「ふれあい囲碁」』(安田泰敏/生活人新書)

囲碁の安田九段が普及に力を入れている「ふれあい囲碁」、感動の記録。

「中学生自殺」のニュースを耳にした安田九段。

  自分に何かできないだろうか?
  そうだ、囲碁を通して孤立して苦しんでいる子とつながろう!
  そして、多くの人に伝え、向かい合う切っ掛けにしてもらおう。

天啓を受けて行動を開始。
囲碁をアレンジした「ふれあい囲碁」を考案し、全国に広めていく。

  「囲碁」ではなく「ふれあい囲碁」。なぜ「ふれあい」がつくのか?
  幼稚園の先生方は、ゲームとしての囲碁では無く、
  囲碁を触れ合いの道具として、子どもたちに伝えたのです。

「ふれあい囲碁」を通して心を開き通わせていく子どもたち、
教師、保護者、地域の人たちの姿が、本書にはあふれるほど紹介されている。
“命を救う”囲碁という表現、大げさではない。

たとえば、院内学級を訪問して仲良くなった男の子が
糖尿病の女の子を励まして言ったことば。

  「お姉ちゃん、同じ生きるなら、笑って生きようよ」

あるいは、知的障碍のある男性が
対戦相手に石を取られるように打っているのを見て、

  「思いやりとは、何かをしてあげるということでは無く、
   相手が喜んでいる姿を見て、自分も嬉しくなること……。」

  小学生も中学生も高校生も、皆が望んでいるのは、
  「自分の傍にいてほしい」
  「自分の話を聞いてほしい」
  「自分のことを見守ってほしい」
  ということなのです。

  普段の休み時間に子どもと遊んでいる先生のクラスは、
  生徒も先生も目が生き生きしています。
  問題が起きてからではなく、普段の生活が大事なのです。

評論家でなく行動者の目で書かれていることばだからこその重みを感じる。

普及活動の過程で実践的に会得する子どもたちとの距離の縮め方、
つながりのつけ方、ルールの説明のしかたが絶妙で、おおいに参考になる。

  まず、子どもたちに声を出させる。そして、笑わせることでした。

  一つ目は、基本だけを教えて技術は教えない。
  二つ目は、一方的な説明をしない。三つ目は、参加させる。

「幼児はまず視覚で理解し、体験して言葉を獲得していく。」
という体験から得られた原理によって導き出された原則は、
どこの教室でも通用するはず。

「ふれあい囲碁」のルールについては、本書ではわからないところがある。
他の文献を参照されたし。


『コミュニケーション力を高める文章の技術』(芦永奈雄/フォレスト出版)

「作文指導のカリスマ」による大人のための文章講座!(帯のコピー)

  どうすれば、伝えたいことをうまく伝えられるようになるのか?
  どうすれば、文章が得意になり、愉しみながら書けるようになるのか?
  その具体的な方法と説明を、次の章からお話ししていくことにしましょう。

  日本の学校教育の最大の弊害だと思うのですが、
  学校でテーマを持つことを学ばせません。
  型どおりのことを覚えさせて、それができるようになることが「勉強」。


『賛美歌にあった「君が代」』(石丸新/新教出版社)

1903年の明治版『讃美歌』が「君が代」入りで発行され
その後も当然のように受け継がれたこと、
「稜威(みいつ)」のような問題語が1954年版『讃美歌』でも
使われていたこと、などを資料によってたどる。

  それぞれの地域、あるいは置かれた状況により違いがあるが、
  戦時下の教会が礼拝式の中で「君が代」をうたった事実を
  忘れてはならないし、あいまいにしてもならない。

  [54年版『讃美歌』の]問題は、明治期以来、学校教育と世間一般で
  用いられていた天皇制用語・皇室用語・国家神道用語を、
  畏れ敬うべき独一の神について用いる場合に、
  十分かつ批判的な吟味を経なかったことにある。

  戦後日本は、ずっと戦後日本であってほしい。
  戦前日本となってはならない。
  鉛筆を握る子どもの手に銃を持たせるようなことにしてはならない。


『読むだけですっきりわかる世界史 古代編』『同 中世編』
                     (後藤武士/宝島SUGOI文庫)

既刊5冊で220万部を誇る「読むだけですっきりわかる」シリーズの
最新刊は世界史4部作の前半2冊、
古代編「ピラミッドから「三国志」まで」、
中世編「イスラーム教の誕生からジャンヌ=ダルクまで」。

縦に数千年、横に西洋から東洋までの広大な地域、
という縦横2本の軸がある科目「世界史」の学び方について、
著者はこう述べる。

  大まかには地域ごとに縦の歴史をたどって、
  横がリンクするところに関してはその都度同時代の他地域の様子を
  確認していけば問題はない。
  [中略]もちろんこの本では、横を見比べなければならないときには
  そのことに触れるから安心してね。(『古代編』)

語り口調でとっつきやすく、必要に応じて脱線しながら
世界の歴史を概観できる。
巻末の王朝年代対照表と語句索引を味方につければこわいものなし。

世界史学習では避けて通れない宗教の解説も
過不足のない穏当な記述でわかりやすい。

中世ヨーロッパの農民一揆と中国の王朝末期の反乱との類似性に
言及したところでは、ワット=タイラーの乱の指導者の言葉
「アダムが耕しイヴが紡いだとき、誰が貴族であったか」から
陳勝・呉広の乱の陳勝の言葉「王侯将相いずくんぞ種あらんや」を
思い起こさせ、こう語る。

  洋の東西を問わず、人間が考えることには共通性があるもの。
  [中略]こんな具合に似ているところを見つけたり、
  思わぬところと思わぬところが予想外につながったりするのが
  世界史の醍醐味だね。(『中世編』)

世界史をこれから学ぶ人にも、
改めて学び直したい人にも、
もちろん受験生にも、
そしてかつて中公文庫『世界の歴史 全16巻』に挫折した人にも
おすすめの世界史入門書...高3のムスメに読ませよう。


『明日へのかけ橋』(小澤優子/教文館)

「シスター山路のお話から考えたこと」という副題のついた教育エッセイ。

「シスター山路」は鎌倉にあるカトリック系の私立清泉小学校の元校長。
著者がシスターからおりに触れて聞いた話を数ページにまとめ、
それを敷衍した著者のエッセイをくわえる、という構成の全23話。

たとえば、シスターは1年生が入学してすぐ、
母親たちにこんな話をするという。

  「[略]あなたがこの子をほんとうに幸福な子にしてくれると思って、
   神様があなたにこの子をお授けになった。それをご存じですか[略]。
   この子を幸福にするかしないかは、誰かがするのではなく、
   あなたがするのです。[略]」

あるいは、シスターは小学1年から3年までが大切だと考え、
こんなことにこだわった教育をする。

  この時期の子供たちには、いわゆる勉強を詰めこむよりゆっくりと
  「一番大事なこと」を教えることにしている。
  一年のときは、たった一行の文字を書いてくる宿題をさせる。
  丁寧に文字を書くことから心をこめることを教える。
  言葉づかいやお辞儀の仕方、人に物を差し出すときはこのように
  ということも教える。

私立公立、カトリックプロテスタント無宗教関係なく、
どこを読んでもしみじみと心に響く教育の真理がしずかに語られている。

著者の夫は俳優の故小澤栄太郎。

それにしても、いい学校だなぁとつくづく思う。


2010年08月05日

ひとくち書評32

『怪盗レッド 1』(秋木真/角川つばさ文庫)

副題に「2代目怪盗、デビューする☆の巻」とある。

13歳になったら「怪盗」をつぐよう父親から言われたアスカ。
いとこの天才ケイとコンビを組み、持ち前の運動神経を生かして
怪盗修業がはじまる。

  大男の背中に回って、足のひざ裏を蹴っとばす。
  ガクン、と大男の体がよろめく。
  「いける!」
  『アスカ、ちがう。それは誘いだ!』
  えっ。


『怪盗レッド 2』(秋木真/角川つばさ文庫)

シリーズ2冊目は「中学生探偵、あらわる☆の巻」。

怪盗レッドとして活躍するアスカとケイに、
中学生探偵の響が挑戦してくる。

  『あと10秒だ……アスカ』
  わたしは、ふるえる手をのばした。
  『やれ』
  ケイの声と同時に、わたしは一方のコードに刃をあてて、
  それを…………………………切った。

いとこどうしの中学生が神出鬼没の義賊怪盗、
かわいい女の子が実働部隊でクールな男の子が頭脳役、
という設定がはまって人気シリーズになりそうな予感。


『いつまでもここでキミを待つ』(ひろのみずえ/ポプラ社)

帰宅をためらいサンライズ出雲に乗ってしまった中学3年生の、
日常からのささやかな(本人にとっては大きな)逸脱を描く。
安心して読める正統派YA、というのは形容矛盾か。

  「なんだか……毎日をくり返すのがイヤになっちゃったの。
   あした、自分が何やるのかわかっていて、
   あさって何やるのかわかっていて……
   ああ、土曜になったらまた、美術スクールに行くんだなって思ったら……」

「teens' best selections」の26冊目。
主人公の名がムスメを呼んでいるようで、つい買ってしまった一冊。


『おしゃべりな五線譜』(香谷美季/ポプラ社)

美優は中高一貫校で演劇部に所属する中学3年生。
友人、先輩、メールでつながる小学校の同級生たちとの
出会い、交流、衝突のすえ、何もかもがいやになり、
ホームの端を歩いていると...。

友だち関係を象徴する「五線譜=平行線」に和音と不協和音が鳴り響く。

  「[前略]一緒にいてくれない味方なんて、なんの役にも立たない、
   救いにもならない、まったくの無駄!
   むしろ、居ない方がマシっていうくらい![後略]」

  「人との距離の取り方って、
   どうやったら教えてあげられると思いますか?」
  [中略]
  「さあ。……その問いに答えがあるとは思えないけど、
   少なくとも、私は、それを知るために学校に来ている気がする」

「teens' best selections」の28冊目。
  『リリース』(草野たき)
  『東京クロスロード』(濱野京子)
  『夏の階段』(梨屋アリエ)
など、中高生を主人公にしたこのシリーズには佳品が多い。
そういえば、みんなツイッターユーザーの作家さん。


『おもしろい話が読みたい! ワンダー編』(青い鳥文庫)

青い鳥文庫創刊30周年記念の企画として、
人気シリーズの外伝、番外編のアンソロジーが3冊、
3か月つづけて刊行されている。

その1冊目「ワンダー編」のラインナップは下記のとおり。

  松原秀行  「パソコン通信探偵団」
  小沢章友  「三国志英雄列伝」
  香谷美季  「あやかしの鏡」
  藤野恵美  「お嬢様探偵ありす」
  はやみねかおる「怪盗クイーン」

本書を読むと、
原シリーズも読みたくなる、読みたくなる、読みたくなる...。

  ぼくには、彼が考えていることが、痛いくらいわかる。
  力がほしい。強大な力だ。だれに頼らなくても、
  自分と自分のたいせつなものを守れるだけの、強い力がほしい。
        「怪盗クイーン外伝 初楼 ~前史~」(はやみねかおる)


『おもしろい話が読みたい! ラブリー編』(青い鳥文庫)

アンソロジー2冊目に収録された原シリーズは下記のとおり。

  あさのあつこ「12歳」
  越水利江子 「ずっときみを愛してる」...新シリーズ開始か?
  小林深雪  「泣いちゃいそうだよ」
  服部千春  「四年一組ミラクル教室」
  令丈ヒロ子 「若おかみは小学生!」

本編を読みたくなった作品、ひとつあり。
全8冊で完結しているので、手に入れて読んでみよう。

  みんなに見えているのは、
  鏡に映ったわたしみたいに、外側の部分だけ。
  本当のわたしは、生身のわたしは、内側にしかいないのに。p.262
             「恋はショパンの調べにのって?」(服部千春)


『火群のごとく』(あさのあつこ/文藝春秋)

少年剣士の葛藤と成長を縦糸に、
藩政に潜む内紛をからめて描いた青春時代小説。

  全身が慄いた。背中が疼いた。何かを感じた。
  意識が束の間、途切れた気がする。
  刀を抜き、闇を払った一瞬の後、透馬が路に倒れこんだ。
  払った刃が手応えを伝えてくる。覚えのある手応えだ。
  人の肉を斬る手応え。

剣の道に励む林弥、道場仲間の源吾と和次郎、
才能あふれる透馬など、登場する若者たちに
『バッテリー』の巧や豪のイメージがオーバーラップする。

著者の時代小説の代表作、
という趣旨の書評を新聞で読んだおぼえがある。


『ヘヴンリープレイス』(濱野京子/ポプラ社)

夏休みにはいってすぐ、引っ越した町を探検していた6年生の和希は
雑木林の廃屋で悩みをかかえる子どもたちと出会う。

年齢のわりに幼い英太、施設を家出した史生、不登校の中学生有佳。
和希は3人が信頼するローシ(老師)に惹かれ、交流を深めていく。

  「知っていることがえらいんじゃないんだよ。
   知りたくても知るチャンスがなかったのだから。
   わからないことは調べればいい。自分で調べるんだよ、史生」

しかし、ローシにつながることでできた子どもたちの世界も、
おとなの論理によってつぶされてしまいそうになる。

   ぼくの親は、和希の自由にしなさいといいながら、
   必ず道を指ししめす。この道を進むといいと思うのだけれど、
   和希はどうしたい? 決めるのはきみだよ。そうして、
   親がしめした道を、自分が選んだと思ってこれまでやってきた。
   本当はどこかで自分をごまかしているってわかっていたはず。

子どもたちの“ヘヴン”がさわやかに描かれたひと夏の物語、
小学生を主人公にした「ノベルズ・エクスプレス」のシリーズで。


『兄妹パズル』(石井睦美/ポプラ社)

兄ふたりの末っ子、5人家族の亜実は高校2年生。
しあわせな家族と信じきっていたのに、
ある日とつぜん次兄が家出してしまう。

   こんなことでいいはずがない。
   みんながみんなやさしいふりをし続けていていいはずがない。
   ほんとうのことを隠し合っているところに、
   信頼とか愛情とか生まれるもんか、と思った。p.179

同じテニス部の親友、サッカー部のあこがれの男子がからみ、
欠けたピースが戻ってくればパズルは完成する...か。

「Webマガジン ブンゲイ・ピュアフル」の連載6回に
同量の書き下ろしをくわえて単行本化。


『ムーVSタクト! 江戸の夜に猫が鳴く 上』
                (深沢美潮/ポプラカラフル文庫)

「IQ探偵ムー」のシリーズ15作目。

江戸時代では謎の盗賊ムウが事件に巻きこまれ、
現代では歴史博物館で起きた不思議な盗難事件の謎解きに
ムーとタクトが挑戦する。

  「すみません。拝見します」
  夢羽が書簡を前に、じっと見つめだすと、
  拓斗も横に座り、同じように見始めた。
  このふたり、まさかこの文字が読めるんだろうか?

交互に展開する二つの事件がどうつながるか、下巻のおたのしみ。

ストーリーはべつにして、

  今は社会科の授業中。
  江戸時代の人々の暮らしを勉強しているところだった。

この設定には違和感を感じる。
ムーは5年生。
江戸時代の学習は、ふつう6年生の1学期後半だから。


『星夜に甦る剣』(池田美代子/青い鳥文庫)

青い鳥文庫版「新妖界ナビ・ルナ」の3作目。

ふうりの危機をのりこえたルナとソラウの3人は、
いよいよナナセと対決する。

  「さあ、ルナ、かくごしなさい!」
  ようやく話したりたらしいナナセが、再度、剣をふりあげると、
  ルナへとふりおろしていきました。
  シャッ!

一話(一冊)で完結せず、いいところでおわって「つづく」。
連載もののコミックのようで、追いかけるのがたいへん。

それから、あきらかな誤植が2つ、これはいただけない。


『一鬼夜行』(小松エメル/ポプラ文庫ピュアフル)

ジャイブ小説大賞受賞作、
審査員をしていた後藤竜二が絶賛した妖怪小説の新星。

  「そこにある幸福を選べば、
   人生も妖生も楽しいに決まっているのだろうに……
   分かっていても駄目なんだろうな」


『ぼくらは海へ』(那須正幹/文春文庫)

児童文学界に衝撃を与えた30年前の作品、初の文庫化。

  ふいに左の足にするどいいたみが走ったかと思うと、
  ものすごい力でひっぱられるのがわかった。
  [中略]ころぶしゅんかん、左手ににぎった懐中電灯の光のなかで、
  高だかとあがる左足にからみついたクレモナロープがちらりと見えた。

  児童文学、子どもが読む物とは、
  健全で明るく生きる力に満ちたものでなければならない。
  そんな既成概念に凝り固まっていた世間には、
  この1冊は毒を含んだ異物でしかなかった……のではないだろうか。
                      あさのあつこ「解説」より


『怪盗紳士』(ルブラン/ポプラ文庫クラシック)

怪盗ルパン全集の2冊目。
正月に買っておいて、先ごろ積読タワーから発掘された本。

  この「怪盗紳士」は、原著者モーリス・ルブランが、
  はじめてルパンの冒険をかいたものです。
  つまり、ルパンは本書で世間にあらわれるのですが、
  それが、まずかれが名探偵ガニマールにとらえられるという、
  スリル満点の場面からはじまるのです。
                     「この本を読むひとに」より

  「怪盗ルパン全集」は翻訳作品ではなく、
  あくまで南洋一郎氏による翻案だったのですね。
  ぼくがわくわくしたルパンは、
  モーリス・ルブランが創造したルパンではなく、
  南氏のルパンだったのだなと、今になって思ったりもします。
                        貫井徳郎「解説」より

たしかに「原作 モーリス・ルブラン 文 南洋一郎」と奥付にある。
全20巻のうち既刊14冊、はやめにそろえておこう。


『種蒔きもせず』(星野富弘/偕成社)

星野さん最新の花の詩画集。

  この花は この草にしか 咲かない
  そうだ 私にしか できないことが あるんだ
                    「ハナニラ」

  一枚の作品を描くのも、
  今まで自分のいのちを注ぎ込んで生み出していると思っていたが、
  それは錯覚だったようだ。
  むしろ描いているものから、筆を通して、
  喜びや優しさ静けさ強さなど、
  生きていく力を私が与えられていたのである。
                          「あとがき」より

帯に告知されているレターセットプレゼント、
応募締切が7月31日消印有効だということにいま気づいた。


2010年07月09日

ひとくち書評31

『僕とおじいちゃんと魔法の塔2』(香月日輪/角川文庫)

  「基本や技は、なるほど大事だろう。
   一握りの天才以外は、あまり自己流ばかりでは行き詰る。
   だが、個性はそれに勝るのだ。お前は、今は自分の個性を
   心にしっかりと根付かせることを心がけろ」

  「お前が、ちゃんとお前であるならば、
   エスペロスがどんな魔力を揮おうと何も変わらん。
   むしろ、エスペロスという存在をプラスの力にできるはずだ。
   お前の広い世界を形作る、特別な欠片にするのだ。
   だがそれは、あくまで欠片の一つにしか過ぎん」


『ビート・キッズ』(風野潮/講談社文庫)

  『ようおやすみ』……ぐっすりと眠りなさいね、
  というような意味になるのかな。
  考えてみたら、ただひとことつけ足すだけやのに、
  ただの『おやすみ』より温かい気がする。


『ビート・キッズ Ⅱ』(風野潮/講談社文庫)

  みんながほんのちょっとずつ空気を揺らして音にして、
  それが合わさって『音楽』を作ったら、
  それは空気を揺らすだけと違て、人の心も揺らすことができるんやな。
  人の手足も揺らして、みんなを踊らすこともできるねんな。


『悦楽の園〈上〉』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)

  でもこの国の許容範囲は、
  その程度の欠落も『障害』と看做すほどに狭い。
  そしてわたしたちは、そのハードな『標準』の範囲からは、
  見事に取りこぼされていきてきたの……


『悦楽の園〈下〉』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)

  たとえ『普通』などという言葉に実体がなくとも、
  あたしたちを取り巻く大人の大多数が信じている限り、
  『普通』は絶大な強制力を持って存在しつづける。


『きみが見つける物語 ティーンエイジ・レボリューション』(角川書店)

  死んだ人が美化されるのもわかるし、
  それに囚われ続けるほど、私は余裕をもって生きていない。
  余計な脚色はしていないつもりだけど、
  好きな人が死んでしまう物語は、
  どうしてこうも安っぽくなってしまうのだろう。
                     椰月美智子「十九の頃」


『Hは寝て待て』(後藤みわこ/講談社)

  「きっと、だれかが気にかけています。わたしはそう思います」

  「友だちはいつだって作れると思う。ヒロちゃんはいい子だからさ。
   三十過ぎてからでも、七十になってからでもいいよ。
   でも、時代を超えて、ずっとそばにいる──
   そんな友だちを作るのは、今のうちじゃないかな。[後略]」


『ストロベリー・ブルー』(香坂直/角川書店)

  もしあのとき、あと一瞬早く手を伸ばしていたなら、
  ぼくは木崎とはぐれずにすんだのだろうか。


『炎たる沼』(池田美代子/講談社)

  いつもだれかの目を気にしながらびくびく生きている自分は
  ジコチューとは正反対だと思っていたが、今ならわかる。
  他人を気にする、その理由。
  それは、自分がよく見られたい、自分を好きでいてほしいから。
  けっして他人のことを思いやっているわけではなかった。


『走れ、カネイノチ!』(杉山亮/講談社)

  うちの近所に、ケムさんという大工さんがいます。[中略]
  たとえば、ふつうの大工さんは釘を打つとき、
  左手で釘を押さえて右手に持ったトンカチでコンコン打ちます。
  ところがケムさんは西部劇のガンマンのように二丁トンカチなのです。


『RDG3 夏休みの過ごしかた』(荻原規子/角川書店)

  「わたしがいやだと思うのは、いけないことなの?
   ふつうになりたいと思うのは……」
  「あのね、少しも迷いがないほうがおかしいんだよ」


『ミクロ家出の夜に』(金治直美/国土社)

  そうだったのか。ふたりとも高いハードルを、
  簡単にのりこえていたわけではなかったのだ。


『妖怪アパートの幽雅な日常4』(香月日輪/講談社文庫)

  俺は、「俺だけ」では成り立たない。
  世界の中にあってこそ、俺は成り立つんだ。

  「若いうちはなんでも許される。悩みも迷いも、ムチャもバカも、
   なんでもやっていいし、なんでもやっちまうもんだ。
   だが、今の若いヤツに一つ欠けているものがある。〝覚悟〟さ」

  「言葉は、身体がともなってなきゃダメだよねー」

  「自分の中に広い世界を持ってる人は、ペットの話をしても、
   持ってる世界の広さがこっちに伝わってくるんだ」


『ぼくらの輪廻転生』(さとうまきこ/角川書店)

  大切なのは前世じゃない。今、この今なんだ。
  この人生で、自分が何をするか、何をやりたいか。
  ああ、それがわかれば……。


『暗き夢に閉ざされた街』(あさのあつこ/ポプラ文庫ピュアフル)

  「[前略]結祈、おまえはそんな娘なんだよ。
   何度でも言う。おまえには、おまえにしかできない役目がある。
   その役目をはたしなさい」


『異界から落ち来る者あり 上』(香月日輪/理論社)

  「俺は、俺の現実を生きていくだけだ」


      ◇     ◇     ◇


ここ2か月ほどのあいだに読んだ
高学年からYA、Teensむけの本16冊から、
“とっておきの一節”を抜き書きしました。

“ひとくち書評”らしく内容と見どころもご紹介したいのですが、
なにぶんにもそこまで手がまわらず、今回はご容赦ください。


どれも三ツ星級、極上の物語ばかりです。
夏休みの読書のお供にいかがでしょう。


2010年06月30日

ひとくち書評30

『読む心・書く心』(秋田喜代美/北大路書房)

中高生をおもな対象とした「心理学ジュニアライブラリ」の一冊、
副題に「文章の心理学入門」とある。

   この本では、みなさんが文章を読んだり書いたりするときに、
   頭の中で何が起こっているのか、読む・書くときの心のしくみに
   ついてお話しながら、どうやって読む力・書く力をつけたら
   よいのかを考えていきたいと思います。

著者の専門は学校心理学、発達心理学。
週末におこなわれる研修会で記念講演をしてくださる先生なので、
研究分野を予習しておこうと別の1冊とあわせて著書を読んでみた。

   読むことは、語や文法の知識、書かれている内容の知識、
   文章構造の知識など読み手がもっている知識と、
   接続詞や図など文中に埋め込まれた手がかりを利用しながら、
   書かれた内容に知識を織り込んでつなぎ、
   1つの意味のまとまりを頭の中につくり出していくこと~

このあたりの記述から、読むにも書くにも“知識”が必要だ、
と牽強付会の解釈を試みることができそう。

第3章「書くことは気づくこと」には、
市毛勝雄、轡田隆史、工藤順一の指導法が紹介されていて、
「東大教授」の目配りの広さに感心することしきり。

   1文を短くし、「○○ということ」「□□と思う」「△△である」
   「▽▽のです」といった言葉は削除することで文がしまります。
   [中略]
   [逆説ではない]「が」を使いたくなったら
   文を切るほうが文間の関係がわかりやすくなります。

さらっと書かれた作文の注意は拙著『文章教室』にも取りあげた
コツとも重なっていて、信頼度がアップする。

「学びの質を保証する授業のために」という講演、
さてどんなお話をうかがうことができるだろうか。


『絵本で子育て』(秋田喜代美+増田時枝/岩崎書店)

「子どもの育ちを見つめる心理学」という副題の、150冊の絵本ガイド。
講演の予習として読んだ著書の「別の1冊」のほう。

著者は発達心理学の専門家、共著者はベテランの保育者。
司書の協力で選書した絵本に解説を施した本書には、
2つの願いがこめられているという。

   ひとつは、子育てをする時にお子さんといっしょに絵本を見て、
   楽しい親子のひと時をもっていただきたいという願いです。

   もうひとつの願いは、親御さん自身に絵本を楽しんでみて
   もらいながら、子育てについて考えてほしいということです。

「絵本で子育て」というタイトルからは絵本をしつけや知育に
役立てるハウツー本という印象も受けるが、
それとは一線を画した立場から書かれている。

   育児に困った時、あるいはまたこれからお子さんが
   どのような行動を示していくのかの発達の見通しをもつために、
   本書を育児のサポーターとして利用しつつ、
   読んでいただけたらと思い、作成しました。

   育児相談などでもよく出される話題について、
   著者らなりに発達心理学の知見をふまえて考え方を示し、
   その話題に関係がある絵本をご紹介するという形式で、
   絵本とつながりをもちつつ、
   子どもの発達を考えてもらえる構成になっています。

0歳から6歳までに分類、見開き2ページに紹介された
1~2冊の絵本の中に、子育てのヒントが散りばめられている。


『小学生の学力は「教科書」中心学習でグングン伸びる!』
                  (親野智可等/すばる舎)

元小学校教師で人気の教育評論家による家庭教育書、
『「ノート」で伸びる!』の姉妹編。

   教科書の活用法を身につけ
   とことん究めれば
   子どもは勉強が楽しくなり
   学力が上がります。

子どもが学校で毎日使っている「教科書」を“最高の教材”ととらえ、
家庭でかんたんにできる「教科書勉」(=教科書を活用した勉強法)を
提案する。

   教科書中心の学習、教科書勉のいいところは、
   小学生の間につけておくべき学力が、まんべんなく、
   しかも確実につく点です。
   そのための方法は、大きく分けて2つあります。
   それが、「音読」と「教科書クイズ」です。

また、第3章に紹介された「教科書勉」8つのポイントのうち、
はじめの3つが「音読・なぞり書き・視写」となっている。

どちらにも共通するのが「教科書の音読」という方法。
著者の23年にわたる公立小学校での経験から導き出された
シンプルな提案だからこそ、説得力がある。

ちなみに“ひげうさぎ”は親力私設応援団として、
46000人を越える読者を有する「親力」メールマガジンの
インデックス を作成している。


『子どもの才能は国語で伸びる』(工藤順一/エクスナレッジ)

「五感を使って読書と作文」という副題のある、
「国語専科教室」で行われている学習活動の記録。

   この本は私が主宰している「国語専科教室」という、
   小さな小学生中心の教室の活動を記録したものです。
   私たちは民間の教育機関として、この八年間、
   新しい国語教育のあり方を模索しながら、
   独自のやり方で読書と作文の教室を運営してきました。

学校にも塾にもない独自の学習法のエッセンスはつぎの点。

   書籍の多読と多作文をする一方で、
   一冊の本の精読=要約をさせていくのです。
   すると、毎日授業のある学校よりも、
   そしてどんなスパルタ塾よりも
   結果としては大量に読み書きすることになるのです。
   しかもとても「楽しく」です。

この考え方にもとづき、本の選び方・読ませ方や
「コボちゃん作文」「本の要約」「ロダン作文」など、
具体的な学習法を実際に子どもが読んだ本、
書いた作文とともに紹介する。

「多読」と「精読」は高濱正伸(「花まる学習会」)の著書でも
強調されていた方法。
シンプルなものほどとりかかりやすく、効果が高く、そして奥が深い。

以下、本書を読んで触発された記述をいくつか抜書きする。

   「あること=A」について「考える」ときには、
   それと似ていたり、反対であったりする「別のこと=B」を
   持ち出してきて、それとの比較をすればいいことになります。
   比較するとは、
   「何が同じで、何がちがうか」ということを考えることです。

   作文が書けない、本が読めない子の多くは、
   実は話し言葉の世界にだけ生きている場合が多いと思います。

   その時期[小学校3~4年から6年生にかけて]に
   書き言葉をきちんと学ぶ時間を作って欲しいということです。
   そのことが才能を育むのです。

   自由な思考、つまり自分で感じたことに基づいて自由に考えるには、
   こうした[「サポートシート」のような]「枠組み」が
   必要になってくるのです。

入試突破を究極の目標とする塾の教え方とは一線を画す、
国語を通じた骨太な教育論となっている。


『世界一の子ども教育モンテッソーリ』(永江誠司/講談社+α新書)

モンテッソーリの幼児教育を脳科学の観点から読み解いた入門書、
副題に「12歳までに脳を賢く優しく育てる方法」とある。

小中高校の教育を脳科学の観点から読み解き再構築した前著に引き続き、
幼児教育の研究に取り組む中で、
著者はモンテッソーリの教育法に強く惹かれ、本書を著したという。

   モンテッソーリ法の具体的な実践内容やその教育効果を確認しながら、
   子どもの脳を賢く優しく育てる方法をわかりやすく解説していきます。
   [中略]本書の内容は、一般の幼児教育、
   また、家庭での子育てにおいても十分適用可能です。

第2章までに脳の各分野の働きを概観し
(ここだけでも脳科学入門として読める)、
第3章からは見たモンテッソーリ教育の5領域を章ごとに取りあげ、
脳科学の観点からその有効性を解説していく。

たとえば...。

   A-10神経が活性化すると、快感という報酬を期待して、
   子どもは積極的、意欲的に取り組むようになるので、
   大きな学習効果が望めるのです。
   モンテッソーリ法は、まさに、
   こうしたA-10神経の働きを高める子ども教育といえるでしょう。

教師にも親にも読みやすく書かれている。


『だから人は本を読む』(福原義春/東洋経済新報社)

資生堂名誉会長であり文字・活字文化推進機構会長も務める
“経済界随一の読書家”による読書論。

   人が本を読まなくなったのだという。
   それでいいのだろうかと怪しむ。
   何やかやと忙しくて時間がないからだともいう。
   そんなに忙しければ、
   朝起きたときに顔を洗わなければいいじゃないか。
   晩飯を抜いたらどうだろうか。
   それは困るというなら、
   どうして本を読むことだけをやめてしまうのか。

開口一番、「はしがき」からしてこうである。
読書への並々ならぬ思いがうかがわれる。

著者は79歳、自宅だけで蔵書2万冊、
机上には常に20~30冊を積みあげ、
月に10冊は読むという読書家である。

要職にあり多忙な日々、
1時間じっくり本を読むという贅沢な時間はない。
ではどうするか。

食事のあと、寝る前、細切れの時間を活用し、
並行して5冊前後を手元に置いて読む、
大切なところ1~2行は必ずメモを取る、
運良く10分でも20分でも時間が空いたら書店に足を運ぶ...。

幼少期のキンダーブックから本を読み続け、
仕事の成果も出してきた人だからこその説得力あることば。

以下、抜書きしておきたいいくつもの警句から厳選した5つを。

   忙しい時期にこそ一日十分でも本を読んで、
   吸収した栄養をその時からの人生に、仕事に役立てるべきなのだ。
   本にも旬があり、人が本を読むにも旬が大切だ。

   本のことを教えてくれる友は多いほどいいに決まっているが、
   その中でもふだん私たちが親しんでいない別な世界の価値を
   知っている人の教えてくれることはさらに貴重な情報になるものだ。

   読書をすることによって力強い文章で表現する力も得られるし、
   コミュニケーション上手にもなるし、
   説得力のあるスピーチを仕立てられる能力もつけられるのだ。

   多くの本を読むことによってひとりでに得られる
   推理力、判断力、構想力のようなものは
   コンピュータを経由した二次、三次資料からは出てこない。

   日本人のプレゼンテーション能力が萎縮してしまった始まりは
   何よりも日本語読み書き能力の低下によるもので、
   それも学校でない幅広い本に接することしか
   解決の方法がないと私は考えている。


『子どもの頭がよくなる読書の習慣』(樋口裕一/PHP文庫)

「小論文の神様」による読書のすすめ、
『「本を読む子」は必ず伸びる!』(すばる舎/2005)の文庫化。

   私がこの本で言いたいのは、「本を読む」ことの大切さです。

なぜ大切か。
理由のひとつは「読書の楽しさを多くの人に見直してほしい」から、
もうひとつの理由は国語力をつけ学力を伸ばすため、と著者は言う。

とくに後者についてはこう述べる。

   本には考える力、文章や人が言っていることを読み取る力、
   自分の意見を正確に伝える力を養うパワーが備わっています。
   それらの力とは、国語をはじめとするすべての科目に
   必要になってくるもので、「本当の頭のよさ」そのものです。

読書により国語力がつき、それが学力アップに結びつくことを
“筋道立てて”“わかりやすく”書いてある。

また、読むことと書くことの関連についてはこう論じる。

   本を読むことと文章を書くことは、表裏一体だと考えています。
   文章を読むからこそ書けるようになるし、
   文章を書くからこそさらに本に書いてあることを深く理解できます。
   どちらも子どもの学力を養ううえで必要です。

学力をつけるには読書と作文が最も効果的、ということに落ち着く。
ひげうさぎ先生の本2冊もあながち的外れではなさそうだ。

ところで、子どもが本を読むようになるための親の手助けとして、
4章にこういう記述がある。

   大事なのは、「本を読むのが普通なんだ」「読むとおもしろそう」と
   いうニュアンスを親が生活のなかで子に伝え、
   本があるのがあたり前の生活環境を意識的につくり出すことです。
   [中略]
   もっともいけないのは、自分が読まずに子どもにばかり
   「少しは本を読んだら」と言うこと。

また、15ジャンル108冊あげられた終章のブックリストも、
薦める本を選ぶ参考になる。

しかしそれでも、子どもが一人で本を読むようになるのはむずかしい。


2010年06月12日

ひとくち書評29

『銀河のペアリング』(後藤みわこ/岩崎書店フォア文庫)

「カプリの恋占い」第5巻はシリーズ最終話。

絵麻(えま)とみのるは、銀河牧場の電話の相手、
トラックの運転手がだれなのかを確かめるため、
2人だけで牧場をたずねる。

銀河牧場牛乳を飲むとアタルンデスのにおいがする理由、
アタルンデスへの道を開く「占い玉」の行方、
アムリ王子とカプリの関係...
シリーズを通じて絡み合っていた謎が、牧場ですべて明らかになる。

   「ママ、ここにいて。一歩も動かないで待っていて。
    きっときっと、わけを話すから。お願いします!」

早々と読んだファンの女の子の感想。
「これでおしまいじゃなくて、アタルンデスの物語を読みたい」


『帰天城の謎』(はやみねかおる/講談社)

「TRICK 青春版」の位置づけで書き下ろされたはやみね最新刊。
山田奈緒子は中学生のころ上田次郎に出会っていた!

TRICKの登場人物が「踊螺那村(おどらなそん)」にある
「帰天城(かえりそらじょう)」と「玲姫の呪い」の謎を解く。

   「イッコウシュウって、なに?」
    わたしは、横にいる菜々子に小声で聞いた。
   「昔は、シュークリームが一個だけ残ってる状況を、
    こういったのよ。」
   「なるほど。」

精妙にはりめぐらされた伏線に巧妙なトリック、
そして絶妙なタイミングであらわれる軽妙な駄じゃれギャグ...
はやみねワールド全開、至妙のエンタテインメント。

   「そんなこと、できるんですか?」
   「無理だ。だが、村人はできると思った。
    生け贄を捧げることで――。」
   「池に絵……?」
    わたしは、イメージする。不帰池に、絵を捧げる。

名探偵夢水清志郎や怪盗クイーンのシリーズとは
ひと味ちがうキャラクターが新鮮で、
TRICKファンもはやみねファンもたっぷりたのしめる。


『ここは京まち、不思議まち 真夜中のネコ会議』(服部千春/青い鳥文庫)

ひとりで祖父の家に暮らすことになった愛香と、
ネコにとりつくおぼこさんの物語、シリーズ第2作。

夏休みに越してきた5年生の愛香。
京都の町と人に馴染もうとするも、
学校ではリレーの選手決めでひと悶着、
商店街ではおぼこさんの“担い手”おとめさんのけが、
そして老舗の下駄屋をのぞく怪しい男。

   「[前略]家族は、おたがいに、
    助けあわないといけないものでしょう?
    なのに、なんで? なんで、このまま別れちゃうの?」

愛香の知恵と機転と勇気でもつれた糸がほどけてゆく。

悪役敵役の登場しないハートウォーミングストーリーに
京ことばが彩りを添える。


『コンビ二たそがれ堂3 星に願いを』(村山早紀/ポプラ文庫ピュアフル)

風早の街にある不思議なコンビニを舞台にした
連作短編集の第3巻、書き下ろしの文庫版で3話収録。

大事な探しものがある人だけが見つけることのできる
コンビニたそがれ堂。

やってきた3人のお客さんは...。


大好きなお兄ちゃんにお弁当を作ってあげたい女の子ですが、
料理が上手にできません。

   そして、描き始めなくては、終わらないのです。
   できあがらないのです、どんな絵も。
   できあがらないのです、どんな料理も。
   (第1話「星に願いを」より)


長く営んできた喫茶店の来し方を振り返るマスター、
たそがれ堂のコーヒーを手伝います。

   「この店は、少しは、みなさんの『居場所』になれていたのかなあ」
   (第2話「喫茶店コスモス」より)


変身ヒーローになりたかった青年が手に入れたのは、変身ベルトでした。

   (でも、俺はこの世界が好きで、いまの当たり前の日々が好きだ。
    そうだったんだ)
   (第3話「本物の変身ベルト」より)


ふだん常体で書いている紹介文が敬体になってしまうほど求心力が強く、
心が惹きつけられる物語。

ほのぼのとした憧れと身を裂かれるような切なさの入り混じった、
そう、学生時代に傾倒した立原えりかを髣髴とさせるメルヘンに
しあがっている。

さいごに、巻末の解説から最高の一文を。

   人を未来に進ませてくれるのは、「過去」と「思い出」なのだ。


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メディアの目

・「昔のくらし」を学習
(文化資料館*10/03/05)

・海の風を体験
(神奈川新聞*10/01/29)

・パイプオルガンコンサート
(神奈川新聞*09/12/15)

・バザーで地域交流
(タウンニュース*09/11/13)

・気分はプロサーファー
(神奈川新聞*09/10/24)

・今週の校長先生(動画)
テレビ神奈川*09/08/10)

・学芸会レポート
小学校受験新聞*08/10/30)

・学習発表会レポート
小学校受験新聞*08/03/09)

・学校自慢
(1年まえ組初等部*07/03)

・正しい知識と行動で命を繋ぐ
(タウンニュース*07/01/19)

・創立者の想いを受け継ぐ
(湘南よみうり*06/11/01)

・われら、湘南そだち
(湘南よみうり*06/10/21)

・茅ヶ崎で育まれて60年
(タウンニュース*06/10/13)

・野球部、初出場初勝利ならず
(朝日新聞*06/07/14)

・アレセイア高校野球部初出場
(タウンニュース*06/06/23)


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