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2010年08月05日

ひとくち書評32

『怪盗レッド 1』(秋木真/角川つばさ文庫)

副題に「2代目怪盗、デビューする☆の巻」とある。

13歳になったら「怪盗」をつぐよう父親から言われたアスカ。
いとこの天才ケイとコンビを組み、持ち前の運動神経を生かして
怪盗修業がはじまる。

  大男の背中に回って、足のひざ裏を蹴っとばす。
  ガクン、と大男の体がよろめく。
  「いける!」
  『アスカ、ちがう。それは誘いだ!』
  えっ。


『怪盗レッド 2』(秋木真/角川つばさ文庫)

シリーズ2冊目は「中学生探偵、あらわる☆の巻」。

怪盗レッドとして活躍するアスカとケイに、
中学生探偵の響が挑戦してくる。

  『あと10秒だ……アスカ』
  わたしは、ふるえる手をのばした。
  『やれ』
  ケイの声と同時に、わたしは一方のコードに刃をあてて、
  それを…………………………切った。

いとこどうしの中学生が神出鬼没の義賊怪盗、
かわいい女の子が実働部隊でクールな男の子が頭脳役、
という設定がはまって人気シリーズになりそうな予感。


『いつまでもここでキミを待つ』(ひろのみずえ/ポプラ社)

帰宅をためらいサンライズ出雲に乗ってしまった中学3年生の、
日常からのささやかな(本人にとっては大きな)逸脱を描く。
安心して読める正統派YA、というのは形容矛盾か。

  「なんだか……毎日をくり返すのがイヤになっちゃったの。
   あした、自分が何やるのかわかっていて、
   あさって何やるのかわかっていて……
   ああ、土曜になったらまた、美術スクールに行くんだなって思ったら……」

「teens' best selections」の26冊目。
主人公の名がムスメを呼んでいるようで、つい買ってしまった一冊。


『おしゃべりな五線譜』(香谷美季/ポプラ社)

美優は中高一貫校で演劇部に所属する中学3年生。
友人、先輩、メールでつながる小学校の同級生たちとの
出会い、交流、衝突のすえ、何もかもがいやになり、
ホームの端を歩いていると...。

友だち関係を象徴する「五線譜=平行線」に和音と不協和音が鳴り響く。

  「[前略]一緒にいてくれない味方なんて、なんの役にも立たない、
   救いにもならない、まったくの無駄!
   むしろ、居ない方がマシっていうくらい![後略]」

  「人との距離の取り方って、
   どうやったら教えてあげられると思いますか?」
  [中略]
  「さあ。……その問いに答えがあるとは思えないけど、
   少なくとも、私は、それを知るために学校に来ている気がする」

「teens' best selections」の28冊目。
  『リリース』(草野たき)
  『東京クロスロード』(濱野京子)
  『夏の階段』(梨屋アリエ)
など、中高生を主人公にしたこのシリーズには佳品が多い。
そういえば、みんなツイッターユーザーの作家さん。


『おもしろい話が読みたい! ワンダー編』(青い鳥文庫)

青い鳥文庫創刊30周年記念の企画として、
人気シリーズの外伝、番外編のアンソロジーが3冊、
3か月つづけて刊行されている。

その1冊目「ワンダー編」のラインナップは下記のとおり。

  松原秀行  「パソコン通信探偵団」
  小沢章友  「三国志英雄列伝」
  香谷美季  「あやかしの鏡」
  藤野恵美  「お嬢様探偵ありす」
  はやみねかおる「怪盗クイーン」

本書を読むと、
原シリーズも読みたくなる、読みたくなる、読みたくなる...。

  ぼくには、彼が考えていることが、痛いくらいわかる。
  力がほしい。強大な力だ。だれに頼らなくても、
  自分と自分のたいせつなものを守れるだけの、強い力がほしい。
        「怪盗クイーン外伝 初楼 ~前史~」(はやみねかおる)


『おもしろい話が読みたい! ラブリー編』(青い鳥文庫)

アンソロジー2冊目に収録された原シリーズは下記のとおり。

  あさのあつこ「12歳」
  越水利江子 「ずっときみを愛してる」...新シリーズ開始か?
  小林深雪  「泣いちゃいそうだよ」
  服部千春  「四年一組ミラクル教室」
  令丈ヒロ子 「若おかみは小学生!」

本編を読みたくなった作品、ひとつあり。
全8冊で完結しているので、手に入れて読んでみよう。

  みんなに見えているのは、
  鏡に映ったわたしみたいに、外側の部分だけ。
  本当のわたしは、生身のわたしは、内側にしかいないのに。p.262
             「恋はショパンの調べにのって?」(服部千春)


『火群のごとく』(あさのあつこ/文藝春秋)

少年剣士の葛藤と成長を縦糸に、
藩政に潜む内紛をからめて描いた青春時代小説。

  全身が慄いた。背中が疼いた。何かを感じた。
  意識が束の間、途切れた気がする。
  刀を抜き、闇を払った一瞬の後、透馬が路に倒れこんだ。
  払った刃が手応えを伝えてくる。覚えのある手応えだ。
  人の肉を斬る手応え。

剣の道に励む林弥、道場仲間の源吾と和次郎、
才能あふれる透馬など、登場する若者たちに
『バッテリー』の巧や豪のイメージがオーバーラップする。

著者の時代小説の代表作、
という趣旨の書評を新聞で読んだおぼえがある。


『ヘヴンリープレイス』(濱野京子/ポプラ社)

夏休みにはいってすぐ、引っ越した町を探検していた6年生の和希は
雑木林の廃屋で悩みをかかえる子どもたちと出会う。

年齢のわりに幼い英太、施設を家出した史生、不登校の中学生有佳。
和希は3人が信頼するローシ(老師)に惹かれ、交流を深めていく。

  「知っていることがえらいんじゃないんだよ。
   知りたくても知るチャンスがなかったのだから。
   わからないことは調べればいい。自分で調べるんだよ、史生」

しかし、ローシにつながることでできた子どもたちの世界も、
おとなの論理によってつぶされてしまいそうになる。

   ぼくの親は、和希の自由にしなさいといいながら、
   必ず道を指ししめす。この道を進むといいと思うのだけれど、
   和希はどうしたい? 決めるのはきみだよ。そうして、
   親がしめした道を、自分が選んだと思ってこれまでやってきた。
   本当はどこかで自分をごまかしているってわかっていたはず。

子どもたちの“ヘヴン”がさわやかに描かれたひと夏の物語、
小学生を主人公にした「ノベルズ・エクスプレス」のシリーズで。


『兄妹パズル』(石井睦美/ポプラ社)

兄ふたりの末っ子、5人家族の亜実は高校2年生。
しあわせな家族と信じきっていたのに、
ある日とつぜん次兄が家出してしまう。

   こんなことでいいはずがない。
   みんながみんなやさしいふりをし続けていていいはずがない。
   ほんとうのことを隠し合っているところに、
   信頼とか愛情とか生まれるもんか、と思った。p.179

同じテニス部の親友、サッカー部のあこがれの男子がからみ、
欠けたピースが戻ってくればパズルは完成する...か。

「Webマガジン ブンゲイ・ピュアフル」の連載6回に
同量の書き下ろしをくわえて単行本化。


『ムーVSタクト! 江戸の夜に猫が鳴く 上』
                (深沢美潮/ポプラカラフル文庫)

「IQ探偵ムー」のシリーズ15作目。

江戸時代では謎の盗賊ムウが事件に巻きこまれ、
現代では歴史博物館で起きた不思議な盗難事件の謎解きに
ムーとタクトが挑戦する。

  「すみません。拝見します」
  夢羽が書簡を前に、じっと見つめだすと、
  拓斗も横に座り、同じように見始めた。
  このふたり、まさかこの文字が読めるんだろうか?

交互に展開する二つの事件がどうつながるか、下巻のおたのしみ。

ストーリーはべつにして、

  今は社会科の授業中。
  江戸時代の人々の暮らしを勉強しているところだった。

この設定には違和感を感じる。
ムーは5年生。
江戸時代の学習は、ふつう6年生の1学期後半だから。


『星夜に甦る剣』(池田美代子/青い鳥文庫)

青い鳥文庫版「新妖界ナビ・ルナ」の3作目。

ふうりの危機をのりこえたルナとソラウの3人は、
いよいよナナセと対決する。

  「さあ、ルナ、かくごしなさい!」
  ようやく話したりたらしいナナセが、再度、剣をふりあげると、
  ルナへとふりおろしていきました。
  シャッ!

一話(一冊)で完結せず、いいところでおわって「つづく」。
連載もののコミックのようで、追いかけるのがたいへん。

それから、あきらかな誤植が2つ、これはいただけない。


『一鬼夜行』(小松エメル/ポプラ文庫ピュアフル)

ジャイブ小説大賞受賞作、
審査員をしていた後藤竜二が絶賛した妖怪小説の新星。

  「そこにある幸福を選べば、
   人生も妖生も楽しいに決まっているのだろうに……
   分かっていても駄目なんだろうな」


『ぼくらは海へ』(那須正幹/文春文庫)

児童文学界に衝撃を与えた30年前の作品、初の文庫化。

  ふいに左の足にするどいいたみが走ったかと思うと、
  ものすごい力でひっぱられるのがわかった。
  [中略]ころぶしゅんかん、左手ににぎった懐中電灯の光のなかで、
  高だかとあがる左足にからみついたクレモナロープがちらりと見えた。

  児童文学、子どもが読む物とは、
  健全で明るく生きる力に満ちたものでなければならない。
  そんな既成概念に凝り固まっていた世間には、
  この1冊は毒を含んだ異物でしかなかった……のではないだろうか。
                      あさのあつこ「解説」より


『怪盗紳士』(ルブラン/ポプラ文庫クラシック)

怪盗ルパン全集の2冊目。
正月に買っておいて、先ごろ積読タワーから発掘された本。

  この「怪盗紳士」は、原著者モーリス・ルブランが、
  はじめてルパンの冒険をかいたものです。
  つまり、ルパンは本書で世間にあらわれるのですが、
  それが、まずかれが名探偵ガニマールにとらえられるという、
  スリル満点の場面からはじまるのです。
                     「この本を読むひとに」より

  「怪盗ルパン全集」は翻訳作品ではなく、
  あくまで南洋一郎氏による翻案だったのですね。
  ぼくがわくわくしたルパンは、
  モーリス・ルブランが創造したルパンではなく、
  南氏のルパンだったのだなと、今になって思ったりもします。
                        貫井徳郎「解説」より

たしかに「原作 モーリス・ルブラン 文 南洋一郎」と奥付にある。
全20巻のうち既刊14冊、はやめにそろえておこう。


『種蒔きもせず』(星野富弘/偕成社)

星野さん最新の花の詩画集。

  この花は この草にしか 咲かない
  そうだ 私にしか できないことが あるんだ
                    「ハナニラ」

  一枚の作品を描くのも、
  今まで自分のいのちを注ぎ込んで生み出していると思っていたが、
  それは錯覚だったようだ。
  むしろ描いているものから、筆を通して、
  喜びや優しさ静けさ強さなど、
  生きていく力を私が与えられていたのである。
                          「あとがき」より

帯に告知されているレターセットプレゼント、
応募締切が7月31日消印有効だということにいま気づいた。


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