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2010年07月09日

ひとくち書評31

『僕とおじいちゃんと魔法の塔2』(香月日輪/角川文庫)

  「基本や技は、なるほど大事だろう。
   一握りの天才以外は、あまり自己流ばかりでは行き詰る。
   だが、個性はそれに勝るのだ。お前は、今は自分の個性を
   心にしっかりと根付かせることを心がけろ」

  「お前が、ちゃんとお前であるならば、
   エスペロスがどんな魔力を揮おうと何も変わらん。
   むしろ、エスペロスという存在をプラスの力にできるはずだ。
   お前の広い世界を形作る、特別な欠片にするのだ。
   だがそれは、あくまで欠片の一つにしか過ぎん」


『ビート・キッズ』(風野潮/講談社文庫)

  『ようおやすみ』……ぐっすりと眠りなさいね、
  というような意味になるのかな。
  考えてみたら、ただひとことつけ足すだけやのに、
  ただの『おやすみ』より温かい気がする。


『ビート・キッズ Ⅱ』(風野潮/講談社文庫)

  みんながほんのちょっとずつ空気を揺らして音にして、
  それが合わさって『音楽』を作ったら、
  それは空気を揺らすだけと違て、人の心も揺らすことができるんやな。
  人の手足も揺らして、みんなを踊らすこともできるねんな。


『悦楽の園〈上〉』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)

  でもこの国の許容範囲は、
  その程度の欠落も『障害』と看做すほどに狭い。
  そしてわたしたちは、そのハードな『標準』の範囲からは、
  見事に取りこぼされていきてきたの……


『悦楽の園〈下〉』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)

  たとえ『普通』などという言葉に実体がなくとも、
  あたしたちを取り巻く大人の大多数が信じている限り、
  『普通』は絶大な強制力を持って存在しつづける。


『きみが見つける物語 ティーンエイジ・レボリューション』(角川書店)

  死んだ人が美化されるのもわかるし、
  それに囚われ続けるほど、私は余裕をもって生きていない。
  余計な脚色はしていないつもりだけど、
  好きな人が死んでしまう物語は、
  どうしてこうも安っぽくなってしまうのだろう。
                     椰月美智子「十九の頃」


『Hは寝て待て』(後藤みわこ/講談社)

  「きっと、だれかが気にかけています。わたしはそう思います」

  「友だちはいつだって作れると思う。ヒロちゃんはいい子だからさ。
   三十過ぎてからでも、七十になってからでもいいよ。
   でも、時代を超えて、ずっとそばにいる──
   そんな友だちを作るのは、今のうちじゃないかな。[後略]」


『ストロベリー・ブルー』(香坂直/角川書店)

  もしあのとき、あと一瞬早く手を伸ばしていたなら、
  ぼくは木崎とはぐれずにすんだのだろうか。


『炎たる沼』(池田美代子/講談社)

  いつもだれかの目を気にしながらびくびく生きている自分は
  ジコチューとは正反対だと思っていたが、今ならわかる。
  他人を気にする、その理由。
  それは、自分がよく見られたい、自分を好きでいてほしいから。
  けっして他人のことを思いやっているわけではなかった。


『走れ、カネイノチ!』(杉山亮/講談社)

  うちの近所に、ケムさんという大工さんがいます。[中略]
  たとえば、ふつうの大工さんは釘を打つとき、
  左手で釘を押さえて右手に持ったトンカチでコンコン打ちます。
  ところがケムさんは西部劇のガンマンのように二丁トンカチなのです。


『RDG3 夏休みの過ごしかた』(荻原規子/角川書店)

  「わたしがいやだと思うのは、いけないことなの?
   ふつうになりたいと思うのは……」
  「あのね、少しも迷いがないほうがおかしいんだよ」


『ミクロ家出の夜に』(金治直美/国土社)

  そうだったのか。ふたりとも高いハードルを、
  簡単にのりこえていたわけではなかったのだ。


『妖怪アパートの幽雅な日常4』(香月日輪/講談社文庫)

  俺は、「俺だけ」では成り立たない。
  世界の中にあってこそ、俺は成り立つんだ。

  「若いうちはなんでも許される。悩みも迷いも、ムチャもバカも、
   なんでもやっていいし、なんでもやっちまうもんだ。
   だが、今の若いヤツに一つ欠けているものがある。〝覚悟〟さ」

  「言葉は、身体がともなってなきゃダメだよねー」

  「自分の中に広い世界を持ってる人は、ペットの話をしても、
   持ってる世界の広さがこっちに伝わってくるんだ」


『ぼくらの輪廻転生』(さとうまきこ/角川書店)

  大切なのは前世じゃない。今、この今なんだ。
  この人生で、自分が何をするか、何をやりたいか。
  ああ、それがわかれば……。


『暗き夢に閉ざされた街』(あさのあつこ/ポプラ文庫ピュアフル)

  「[前略]結祈、おまえはそんな娘なんだよ。
   何度でも言う。おまえには、おまえにしかできない役目がある。
   その役目をはたしなさい」


『異界から落ち来る者あり 上』(香月日輪/理論社)

  「俺は、俺の現実を生きていくだけだ」


      ◇     ◇     ◇


ここ2か月ほどのあいだに読んだ
高学年からYA、Teensむけの本16冊から、
“とっておきの一節”を抜き書きしました。

“ひとくち書評”らしく内容と見どころもご紹介したいのですが、
なにぶんにもそこまで手がまわらず、今回はご容赦ください。


どれも三ツ星級、極上の物語ばかりです。
夏休みの読書のお供にいかがでしょう。


 

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メディアの目

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(神奈川新聞*10/01/29)

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