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2010年06月30日

ひとくち書評30

『読む心・書く心』(秋田喜代美/北大路書房)

中高生をおもな対象とした「心理学ジュニアライブラリ」の一冊、
副題に「文章の心理学入門」とある。

   この本では、みなさんが文章を読んだり書いたりするときに、
   頭の中で何が起こっているのか、読む・書くときの心のしくみに
   ついてお話しながら、どうやって読む力・書く力をつけたら
   よいのかを考えていきたいと思います。

著者の専門は学校心理学、発達心理学。
週末におこなわれる研修会で記念講演をしてくださる先生なので、
研究分野を予習しておこうと別の1冊とあわせて著書を読んでみた。

   読むことは、語や文法の知識、書かれている内容の知識、
   文章構造の知識など読み手がもっている知識と、
   接続詞や図など文中に埋め込まれた手がかりを利用しながら、
   書かれた内容に知識を織り込んでつなぎ、
   1つの意味のまとまりを頭の中につくり出していくこと~

このあたりの記述から、読むにも書くにも“知識”が必要だ、
と牽強付会の解釈を試みることができそう。

第3章「書くことは気づくこと」には、
市毛勝雄、轡田隆史、工藤順一の指導法が紹介されていて、
「東大教授」の目配りの広さに感心することしきり。

   1文を短くし、「○○ということ」「□□と思う」「△△である」
   「▽▽のです」といった言葉は削除することで文がしまります。
   [中略]
   [逆説ではない]「が」を使いたくなったら
   文を切るほうが文間の関係がわかりやすくなります。

さらっと書かれた作文の注意は拙著『文章教室』にも取りあげた
コツとも重なっていて、信頼度がアップする。

「学びの質を保証する授業のために」という講演、
さてどんなお話をうかがうことができるだろうか。


『絵本で子育て』(秋田喜代美+増田時枝/岩崎書店)

「子どもの育ちを見つめる心理学」という副題の、150冊の絵本ガイド。
講演の予習として読んだ著書の「別の1冊」のほう。

著者は発達心理学の専門家、共著者はベテランの保育者。
司書の協力で選書した絵本に解説を施した本書には、
2つの願いがこめられているという。

   ひとつは、子育てをする時にお子さんといっしょに絵本を見て、
   楽しい親子のひと時をもっていただきたいという願いです。

   もうひとつの願いは、親御さん自身に絵本を楽しんでみて
   もらいながら、子育てについて考えてほしいということです。

「絵本で子育て」というタイトルからは絵本をしつけや知育に
役立てるハウツー本という印象も受けるが、
それとは一線を画した立場から書かれている。

   育児に困った時、あるいはまたこれからお子さんが
   どのような行動を示していくのかの発達の見通しをもつために、
   本書を育児のサポーターとして利用しつつ、
   読んでいただけたらと思い、作成しました。

   育児相談などでもよく出される話題について、
   著者らなりに発達心理学の知見をふまえて考え方を示し、
   その話題に関係がある絵本をご紹介するという形式で、
   絵本とつながりをもちつつ、
   子どもの発達を考えてもらえる構成になっています。

0歳から6歳までに分類、見開き2ページに紹介された
1~2冊の絵本の中に、子育てのヒントが散りばめられている。


『小学生の学力は「教科書」中心学習でグングン伸びる!』
                  (親野智可等/すばる舎)

元小学校教師で人気の教育評論家による家庭教育書、
『「ノート」で伸びる!』の姉妹編。

   教科書の活用法を身につけ
   とことん究めれば
   子どもは勉強が楽しくなり
   学力が上がります。

子どもが学校で毎日使っている「教科書」を“最高の教材”ととらえ、
家庭でかんたんにできる「教科書勉」(=教科書を活用した勉強法)を
提案する。

   教科書中心の学習、教科書勉のいいところは、
   小学生の間につけておくべき学力が、まんべんなく、
   しかも確実につく点です。
   そのための方法は、大きく分けて2つあります。
   それが、「音読」と「教科書クイズ」です。

また、第3章に紹介された「教科書勉」8つのポイントのうち、
はじめの3つが「音読・なぞり書き・視写」となっている。

どちらにも共通するのが「教科書の音読」という方法。
著者の23年にわたる公立小学校での経験から導き出された
シンプルな提案だからこそ、説得力がある。

ちなみに“ひげうさぎ”は親力私設応援団として、
46000人を越える読者を有する「親力」メールマガジンの
インデックス を作成している。


『子どもの才能は国語で伸びる』(工藤順一/エクスナレッジ)

「五感を使って読書と作文」という副題のある、
「国語専科教室」で行われている学習活動の記録。

   この本は私が主宰している「国語専科教室」という、
   小さな小学生中心の教室の活動を記録したものです。
   私たちは民間の教育機関として、この八年間、
   新しい国語教育のあり方を模索しながら、
   独自のやり方で読書と作文の教室を運営してきました。

学校にも塾にもない独自の学習法のエッセンスはつぎの点。

   書籍の多読と多作文をする一方で、
   一冊の本の精読=要約をさせていくのです。
   すると、毎日授業のある学校よりも、
   そしてどんなスパルタ塾よりも
   結果としては大量に読み書きすることになるのです。
   しかもとても「楽しく」です。

この考え方にもとづき、本の選び方・読ませ方や
「コボちゃん作文」「本の要約」「ロダン作文」など、
具体的な学習法を実際に子どもが読んだ本、
書いた作文とともに紹介する。

「多読」と「精読」は高濱正伸(「花まる学習会」)の著書でも
強調されていた方法。
シンプルなものほどとりかかりやすく、効果が高く、そして奥が深い。

以下、本書を読んで触発された記述をいくつか抜書きする。

   「あること=A」について「考える」ときには、
   それと似ていたり、反対であったりする「別のこと=B」を
   持ち出してきて、それとの比較をすればいいことになります。
   比較するとは、
   「何が同じで、何がちがうか」ということを考えることです。

   作文が書けない、本が読めない子の多くは、
   実は話し言葉の世界にだけ生きている場合が多いと思います。

   その時期[小学校3~4年から6年生にかけて]に
   書き言葉をきちんと学ぶ時間を作って欲しいということです。
   そのことが才能を育むのです。

   自由な思考、つまり自分で感じたことに基づいて自由に考えるには、
   こうした[「サポートシート」のような]「枠組み」が
   必要になってくるのです。

入試突破を究極の目標とする塾の教え方とは一線を画す、
国語を通じた骨太な教育論となっている。


『世界一の子ども教育モンテッソーリ』(永江誠司/講談社+α新書)

モンテッソーリの幼児教育を脳科学の観点から読み解いた入門書、
副題に「12歳までに脳を賢く優しく育てる方法」とある。

小中高校の教育を脳科学の観点から読み解き再構築した前著に引き続き、
幼児教育の研究に取り組む中で、
著者はモンテッソーリの教育法に強く惹かれ、本書を著したという。

   モンテッソーリ法の具体的な実践内容やその教育効果を確認しながら、
   子どもの脳を賢く優しく育てる方法をわかりやすく解説していきます。
   [中略]本書の内容は、一般の幼児教育、
   また、家庭での子育てにおいても十分適用可能です。

第2章までに脳の各分野の働きを概観し
(ここだけでも脳科学入門として読める)、
第3章からは見たモンテッソーリ教育の5領域を章ごとに取りあげ、
脳科学の観点からその有効性を解説していく。

たとえば...。

   A-10神経が活性化すると、快感という報酬を期待して、
   子どもは積極的、意欲的に取り組むようになるので、
   大きな学習効果が望めるのです。
   モンテッソーリ法は、まさに、
   こうしたA-10神経の働きを高める子ども教育といえるでしょう。

教師にも親にも読みやすく書かれている。


『だから人は本を読む』(福原義春/東洋経済新報社)

資生堂名誉会長であり文字・活字文化推進機構会長も務める
“経済界随一の読書家”による読書論。

   人が本を読まなくなったのだという。
   それでいいのだろうかと怪しむ。
   何やかやと忙しくて時間がないからだともいう。
   そんなに忙しければ、
   朝起きたときに顔を洗わなければいいじゃないか。
   晩飯を抜いたらどうだろうか。
   それは困るというなら、
   どうして本を読むことだけをやめてしまうのか。

開口一番、「はしがき」からしてこうである。
読書への並々ならぬ思いがうかがわれる。

著者は79歳、自宅だけで蔵書2万冊、
机上には常に20~30冊を積みあげ、
月に10冊は読むという読書家である。

要職にあり多忙な日々、
1時間じっくり本を読むという贅沢な時間はない。
ではどうするか。

食事のあと、寝る前、細切れの時間を活用し、
並行して5冊前後を手元に置いて読む、
大切なところ1~2行は必ずメモを取る、
運良く10分でも20分でも時間が空いたら書店に足を運ぶ...。

幼少期のキンダーブックから本を読み続け、
仕事の成果も出してきた人だからこその説得力あることば。

以下、抜書きしておきたいいくつもの警句から厳選した5つを。

   忙しい時期にこそ一日十分でも本を読んで、
   吸収した栄養をその時からの人生に、仕事に役立てるべきなのだ。
   本にも旬があり、人が本を読むにも旬が大切だ。

   本のことを教えてくれる友は多いほどいいに決まっているが、
   その中でもふだん私たちが親しんでいない別な世界の価値を
   知っている人の教えてくれることはさらに貴重な情報になるものだ。

   読書をすることによって力強い文章で表現する力も得られるし、
   コミュニケーション上手にもなるし、
   説得力のあるスピーチを仕立てられる能力もつけられるのだ。

   多くの本を読むことによってひとりでに得られる
   推理力、判断力、構想力のようなものは
   コンピュータを経由した二次、三次資料からは出てこない。

   日本人のプレゼンテーション能力が萎縮してしまった始まりは
   何よりも日本語読み書き能力の低下によるもので、
   それも学校でない幅広い本に接することしか
   解決の方法がないと私は考えている。


『子どもの頭がよくなる読書の習慣』(樋口裕一/PHP文庫)

「小論文の神様」による読書のすすめ、
『「本を読む子」は必ず伸びる!』(すばる舎/2005)の文庫化。

   私がこの本で言いたいのは、「本を読む」ことの大切さです。

なぜ大切か。
理由のひとつは「読書の楽しさを多くの人に見直してほしい」から、
もうひとつの理由は国語力をつけ学力を伸ばすため、と著者は言う。

とくに後者についてはこう述べる。

   本には考える力、文章や人が言っていることを読み取る力、
   自分の意見を正確に伝える力を養うパワーが備わっています。
   それらの力とは、国語をはじめとするすべての科目に
   必要になってくるもので、「本当の頭のよさ」そのものです。

読書により国語力がつき、それが学力アップに結びつくことを
“筋道立てて”“わかりやすく”書いてある。

また、読むことと書くことの関連についてはこう論じる。

   本を読むことと文章を書くことは、表裏一体だと考えています。
   文章を読むからこそ書けるようになるし、
   文章を書くからこそさらに本に書いてあることを深く理解できます。
   どちらも子どもの学力を養ううえで必要です。

学力をつけるには読書と作文が最も効果的、ということに落ち着く。
ひげうさぎ先生の本2冊もあながち的外れではなさそうだ。

ところで、子どもが本を読むようになるための親の手助けとして、
4章にこういう記述がある。

   大事なのは、「本を読むのが普通なんだ」「読むとおもしろそう」と
   いうニュアンスを親が生活のなかで子に伝え、
   本があるのがあたり前の生活環境を意識的につくり出すことです。
   [中略]
   もっともいけないのは、自分が読まずに子どもにばかり
   「少しは本を読んだら」と言うこと。

また、15ジャンル108冊あげられた終章のブックリストも、
薦める本を選ぶ参考になる。

しかしそれでも、子どもが一人で本を読むようになるのはむずかしい。


 

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