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2010年03月01日

ひとくち書評25

『ママがこわれた』(後藤みわこ/岩崎書店)

「福島正実記念SF童話賞」の大賞を受賞した作品で、著者のデビュー作。

4年生の陸(りく)が帰宅すると、
るすばんロボットのルイが「ママはこわれました」と言う。
あわててさがしに出かけると、病院にかけこんでいくパパの姿が...。

ユーモラスなエピソードの中に
「親子の絆」というシリアスなテーマが織りこまれた物語。
謎解きもたのしめる。

キーワードは「くそったれ」。

   「 ~ おやじなんか、なんにもわかってない」

「~」のところの息子のセリフが身につまされる。

Tips...ルイが空中に浮く「反重力発生そうち」は、
のちに書かれる「飛び箱」の「反重力エンジン」につながっていて興味深い。


『いのちがぱちん』(後藤みわこ/学研)

『ママがこわれた』でデビューした著者の第2作。

曲がったことが大きらいな4年生「正義のミカコ」が、
傍若無人な弟や転校生の智、交通事故で体が不自由になった
ヒロさんとのかかわりを通して「いのち」を見つめていく物語。

   ぱちん。
   あれは、いのちの音。
   ここにいのちがあったんだよって、教えてくれる音。

身近なできごとをきっかけに、
中学年くらいの子でも無理なく生と死について考えることができる。

「ぱちん」という音が効いている。
何の音なのかは、本書にて。


『ステラの秘密の宝箱』
『ジャックの豆の木』
『アリスの不思議な青い砂』(後藤みわこ/青い鳥文庫fシリーズ)

「銀河へ飛びだせBOX!」の既刊3冊、まとめて読了。

時は23世紀初頭、
月の裏側にある「ファーサイド学園」に在学する
ジャック、クラウド、キイのイケメン(死語か)中3トリオが、
それぞれの“さがしもの”を追って宇宙をかけめぐるスペースオペラ。

独立したストーリーなので、3冊のどれから読んでも入っていける。

みなしごで宇宙船技師の養子となり学園長も務めるジャック、
失踪したワープ実験船パイロットの孫にあたるクラウド、
祖父によりスパイとして学園に送り込まれたが2人の味方となったキイ、
それぞれが女の子大好きだったり女性アレルギーだったり
メカオタクだったりと、キャラクターの魅力いっぱい。

悪漢ヒヒとジャックの対決、ひるんだヒヒが声をあげる場面で...

   「ヒ、ヒー!」
    ナイフごと飛び下がるヒヒに、ジャックがいった。
   「自己紹介?」(『ステラの~』)

このゆるい空気感がたまらない。

それにしても、なぜ「fシリーズ」なのだろう。


『あした地球がおわる』(後藤みわこ/汐文社)

読み進むほどにぞくぞくしてくる近未来を舞台にした異色作。

生物が死に絶えた地球。
残された6年生のコウと貴也、幼いルミ、中学生の夏姫が
自力で生き抜いていこうとする物語。

4人だけがなぜ生き残ったか、コウと貴也の関係は、
ほかに生きている人間はいないのかなどが、
人類を滅亡させた「カケラ」「あれ」の正体とともに徐々に明かされていく。

   「おれたちは人間なんだからさ、歌だって、本だって、
   なくしちゃいけないんだと思う。
   もう、なくしすぎたんだから、一冊くらい持っていこうぜ」

対象はずばり、6年男子。ピンポイントで読ませたい。


『黒まるパンはだれのもの?』(後藤みわこ/あかね書房)

手づくりパンと携帯電話を小道具に、
「おれのお母ちゃん」というテーマがぐいぐいまっすぐ迫ってくる物語。

4年生の雄介は、これまで自分だけのものだったはずの
母ちゃん手づくりの黒まるパンがそうではなくなりはじめたことに気づき、
けれどなかなかその事実を受け入れることができず、悶々と悩み、
ついに...。

   「 ~ おれのパンやったのに。
   おれのお母ちゃんのパンやのに、おれのお母ちゃんやのに!」

中学年のうちに母親からの自立の芽が出てくると、
じょうずに成長していくだろうなぁ、
だけど現実の男の子はいつまでたってもなぁ、
だからこういう本を読んで疑似体験してもらわないとなぁ...
などと思いながら読んだ本。

みわこさん、ありがとう。


      ◇     ◇     ◇


『越境する児童文学』(野上暁/長崎出版)

『飛ぶ教室』の連載をまとめたもの。
児童文学とYA、一般書の境目を知りたくて目を通す。

   「児童文学と思春期文学[≒YA]の基本的なちがいは、
   主人公の成長のしかたにあるのではない ~ YA小説は、
   児童文学のように <自己> と自己発見に焦点をあてるよりも、
   社会と個人の関係を前面に押しだして、
   社会構造を断固として問いただす ~」

引用されているトライツのこの言明、いまいちよくわからない。
児童文学だって「社会と個人の関係」が描かれているし、
YAだって「 <自己> と自己発見」に焦点があたっているもの。

笹生陽子『ぼくは悪党になりたい』が一般書、
『バラ色の怪物』『サンネンイチゴ』が児童書として流通する違いについて、
著者は、

   「一般書の編集部から依頼されたか、
   児童書の編集者によって作られたかの違いだけであって、
   それは作品のジャンル分けとは関係ない」

と書く。

それを言っちゃあおしまいよ...とつぶやきたくなる。

いずれにせよ、本書に取り上げられている児童文学、思春期文学の
半分も読んでいないことにあらためて気づかされる。
読書量の圧倒的な不足を痛感。

とくに80年代後半から90年代にかけて、
YAというジャンルが固まりつつある時期の作品に弱い。

新卒から数年間、ぼくがいちばん子どもの本から離れていたころだ。

誤植Tips
 児童文学いう p.4
 始めての旅 p.93
 福音館書房 p.108
 片川優子 p.191


『ことばの贈りもの』(松岡享子/東京子ども図書館)

「レクチャーブックス・松岡享子の本2」という副題で
3本の講演録が収められている。

家庭文庫や図書館活動に長くかかわっている著者が、
この講演では読書や読み聞かせ以前の、
子どもがことばを獲得していく時期について語っている。

   もう何年も前から、私の関心は、読書より前のこと、
   子どもが本に出会う以前のことに、より強く
   引きつけられるようになっていました。
   ~ 子どもが本に触れ、読書をたのしむようになるためには、
   この時期に、ことばの土台をしっかりつくっておくことが
   大切だと思うようになったからです。

平明な語りかけるような文章の中にだいじなことがたくさんつまっている。
いくつも折り返した“ドッグイヤー”から一つ選ぶとすると、これ。

   お話を聞くとき、本を読むとき、
   まずそこで語られることばに耳を傾ける、
   そこに書かれていることばに興味をもつ、という基本姿勢は、
   このごく幼い日の親子の通じ合いの体験から生まれてくるのです。
   そのためにこそ、まずおとなが子どものいうことを
   よく聞くことが肝要だと ~

幼稚園の講演に招かれると幼児期の読み聞かせと親子関係、
小学校とのつながりについて話すが、それより前の
乳児期から「ことばの力」を育てていくことがだいじだという。

となると、それらのことはどんな場で誰に話せば伝わるのか、
という難問に突き当たる。


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