ひとくち書評23
『甘党仙人』(濱野京子/理論社)
いったとたんに、陸はしまったと思った。
でも、口にしてしまった言葉を取り消すことはできない。
バスケットボールが得意な4年生の陸、友だちの翔の家に
中国からやってきたおじいちゃんが気になってしかたがない。
テレパシーが使えたり、瞬間移動ができたり...
あのおじいちゃん、もしかすると仙人かもしれない。
それも甘いものが大好きな。
YA分野でヒットをとばしている濱野京子の新作は
中学年むけの友情と淡い初恋の物語、
甘党の仙人というスパイスがピリッと効いている。
バレンタインにロイズのチョコレートを選ぶあたり、好きだなぁ。
『白いプリンスとタイガー』(宗田理/角川つばさ文庫)
『もうやるしかない。たとえ失敗しても、
燃え尽きる前に祥子の魂は絶対に助ける』
隼人は初めて祥子の名前を呼ぶと、サーベルタイガーを
牙で押さえこんでいる冷凍マンモスに向かって走り出した。
「東京キャッツタウン」シリーズの2冊目。
たくさんの登場人物がめまぐるしく動き、
ストーリーが展開していくスラップスティックファンタジー。
ついていくのがやっとだが、人気は出そう。
1冊目を読んでおくと理解が早い。
読書は自転車と同じように、最初は少しの訓練が必要です。
しかし、読んでいく楽しさを知れば、どんな遠くの世界にも
自分の速度で出かけることができます。それは、
想像力という「つばさ」を手に入れたことにほかなりません。
創刊してまもなく1周年を迎える角川つばさ文庫、
「発刊のことば」をあらためて読み直す。その意気や善し。
2010年は「国民読書年」とされている。
事業仕分けでかんたんに削られてしまうような
底の浅いイベント的施策でなく、地道な、
けれど実効ある取り組みをうちの学校でも考えたい。
『バカ田トリオのゆううつ』(深沢美潮/ポプラカラフル文庫)
「おまわりさん、捕まえてください。
その人、振り込め詐欺の犯人です!」
IQ探偵ムーの最新作は「朝小」連載の文庫化。
身近なできごとがからみあい、
事件が見えてきたところで夢羽の推理がビシッと決まる。
読み出したら止まらない
「ジェットコースターノベル」という惹句に偽りなし。
“ひげうさぎ文庫”でも大人気のシリーズ、
寒い季節が背景のストーリーはまさにいまが旬。
白いダウンジャケットを着て、足長に見えるジーンズに
白いセーターの彼女。やっぱり白い毛糸帽子をかぶっているのが、
まるで風邪薬のCMに出てくる美少女そっくりだ。
いや、違う。夢羽のほうが百倍かわいい。
男の子の心をくすぐるキャラクター、
いちど手にしたら一気読みまちがいなし。
『季節はずれの幽霊騒動』(深沢美潮/ポプラカラフル文庫)。
「そやなくて。ほんまは……うち、うれしかってん!」
第一話「季節はずれの幽霊騒動」より
「たぶん、彼女が犯人だ。早く追いかけよう!」
第二話「オリオンの約束」より
人気シリーズ「IQ探偵タクト」の4冊目はポプラカラフル文庫として。
ムーが公立小学校の5年生であるのに対して、
タクトは制服がおしゃれな私立小学校に通う6年生。
なんとなく親近感を覚える。
一話目は幽霊さわぎに友情がからんだ謎を解き、
二話目はロックのライブ会場で起きる盗難事件をロマンチックに解決する。
先ごろ出版されたムーの新刊とあわせ、文庫にならべる予定。
『奇巌城』(ルブラン/ポプラ文庫)
「わがはいは、この秘宝には、ぜったい手をつけんのだ。
これはむかしからのフランス国民のものなのだ。
[中略]
国民のものに手をだしはしない。
どうか、このことを全世界に知らせてくれたまえ」
やはり買ってしまった、ルパンの復刊シリーズ。
サイトでカバーの絵を見た瞬間に、小学校の図書室の佇まいから、
司書の先生の声、果ては本のにおいまで、
懐かしい思い出がまとめてうかんできた。
で、そのまま「買い物カゴ」へ。
「少年探偵団」シリーズ26巻が終わったと思ったら、
こんどは「怪盗ルパン」シリーズの復刻とは。やるな、ポプラ社。
たしかあのときは全15巻だったはず。ぜんぶ読み直すとするか。
それにしても、子ども時代の刷り込みはこわい。
『天才女医、アンが行く』(福田隆浩/講談社)
アン先生は、一番初めの子のときから、
すでに彼の名前を呼んでいた。そして、その後も、
検診を受ける子どもたち全員を、名前で呼び、声をかけていた。
シリーズ3作目、
アン先生のとぼけたキャラと高度な医療技術のギャップ、
ひねりのあるプロットとはっとさせられる謎解き、
そして視点人物の悩みと成長の物語、文句なしにおもしろい。
学校を描いた場面のディテールにリアリティがあり、感心させられる。
著者の本業は特別支援学校の先生とのこと。なるほどね。
◇ ◇ ◇
『ブンダバーのただいま~!』(くぼしまりお/ポプラ社)
「ぼくはね、友だちが真剣に考えて決めたことは、
それが、ぼくにとって、どんなにさみしいことでも、
応援することにしてるんだ」
最新刊は盗まれたマーメイドちゃんを取り戻す完結編。
文と絵の絶妙なコラボが見どころ。
『月光電気館の幽霊』(斉藤洋/ポプラポケット文庫)
「パパー!『明日に向かって撃て!』と『バジル大作戦』っていう
映画のDVD、持ってるーっ?」
「霊界交渉人ショウタ」シリーズの2作目。
往年の名作映画ネタでおとなもたのしめる。
『猫耳探偵まどか』(松原秀行/講談社)
「もういいわ、そんな戯れ言は。
わたし、わかったの、この事件の真相が。」
“書き下ろし100冊”として刊行された
青い鳥文庫パスワードシリーズのスピンオフ作品。
表紙の絵、ピンク系の色、目をひく装丁にしあがっている。
『クローバー』(中西翠/講談社)
大切なものを守ろうとしてもうまくいかないのはどうしてだろう。
どうしてこんなに不器用なんだろう。
四つ葉のクローバーをモチーフにしたさわやかな初恋物語。
「恋の話が読みたい」という小学生にぴったり。
『僕とあいつのトライアル』(川上途行/ポプラ社)
手に入れたいもの、失いたくないものもわかったのに。
僕はどうすればいいのだろう。何を頑張ればいい?
売れないお笑い芸人と小学3年生が漫才コンビを組む...
窮屈な設定をさわやかな恋がカバーした佳品。
『マイナークラブハウスは混線状態』(木地雅映子/ポプラ文庫ピュアフル)
「……奥の方の自分と、よく相談するんだよ。」
ただのYAではないとは思っていたが、
シリーズ3冊でここまで化けるとは。
すべて文庫書き下ろしなのもありがたい。
ピュアフル文庫の発行元がジャイブからポプラ社にうつったらしい。
『妖怪アパートの幽雅な日常3』(香月日輪/講談社文庫)
あまり本を読まない中3のムスコが喜んで手にする文庫のひとつ。
心にひびくことばが散りばめられている。
そう。「先輩」であり「先生」なんだよ、まさに。
子どもにとっての大人の存在って、それなんじゃねぇ?
なぜ「俺たち」だけが、変わってゆくのだろう。
なぜ「俺たち」は、変わらずにはいられないのだろう。
「結局は今も昔も、そういう問題の多くは
『未知のもの』に対する怖れや偏見や差別から起こるんだよね」
などなど。
◇ ◇ ◇
以上、ツイッターにPostした「ひとくち書評」から、
子どもの本関係を抜き出し、ブログ用に体裁を整えて載せました。




